恋人の街に降るボレロ

朝陽より早く

カーテンのすき間から
白い光が射し込む前に
ベッドから出て
顔を洗って
昨日準備しておいた
服に着替えて
ハデすぎないメイク
なんかチガウ
もう一回
待ち合わせのカフェ
友達が余計なひとこと
「こんなに早いの珍しいね」
やめてよ
彼が聞いてるのに
紅葉のあしあと

さく
さく
彼のスニーカーが
紅葉を散らす
私のハイカットは
それをもっと散らかす
彼が踏んだ葉っぱを
あえて
踏んで
そんな意味もないこと
でも知ってるの
彼も
前の紅葉を追ってること
アインシュペナー

まだ
苦いのはニガテ
甘ったるい
クリームで隠して
あなたの真似を
してみるけど
でもやっぱり
最後は
苦い
diary

友達と私
オソロイの
diary
虹色の空の表紙に
“Best Friends Forever”
「同じの買おうよ」
「なに書くの?」
あなたは
彼氏との予定
私は
押し迫る最後
絶対に交わらない
オソロイの
diary
友達は知らない
diary
ずっとヒミツ
B・G・M

店内に流れる
私の好きな
ラブソング
小さな声
微妙にハズレた
鼻唄が
私にあてた
ギフトのようで
耳に残って
離れない
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
SnapSnap

ちゃんと写真は
撮らなきゃね
いつも通りの
グループショット
あぁ
近すぎるよ
もっと離れてよ
変な顔になってないかな
ブレていませんように
あぁ
でももっと
近くにいたかった
あの一瞬が
ずっと続けばいいのに
ありがとう

“カシャンッ”
彼が落としたものを
拾ってあげたら
「ありがとう」
「それ何?」
「イヤホンケース」
smiley柄
可愛くて
にやけ顔が
バレないように
手でほっぺたを
直してるとこ
すれ違う人と
目が合った
笑った

たくさん笑った
ほっぺが痛くなるくらい
おなか抱えて
大口開けて
いいでしょ?
最後くらい
最高に楽しく
キラキラしい思い出
残したって
HOME

お風呂もおわって
髪の毛アップにまとめて
もこもこルームウェアに
着替えたら
声のトーンと口角は
大幅ダウン
スマホは遠くへ
みんな今日のことで
お喋りしてる
バイブレーション
でも私は
見ない
見たくない
私のいないところで
ハッピーでいる
あなたなんて
でも結局
「楽しかった
また遊ぼうね」
リセット

眠って
目覚めたら
消えていればいいのに
今日で忘れるって
決めたから
私が
うろうろしているうちは
まだ今日
でもあなたは
どんどん先に進んで
たまに並んでくれたって
すぐにあの子を追いかけて
私も
進まなきゃ
もうすぐ
明日
fin d’un début
ある始まりの終わり