曖昧な幸せ | 嘘に騙されたふりをする、知的な処世術について。ラ・ロシュフコーの名言とカフェ・ボンボンの甘いグラデーションが、白黒つけられない恋の迷いを優しく包み込む。
もう夏かしら?
夏ね。夏だわ。
汗ばむ季節。
いかがお過ごしですか?
るぅにぃ様の『曖昧な幸せ』が、
7月の恋愛詩として選ばれました。
@shii_kun_69
読んだとき、
胸の奥がきゅっと音を立てるような、
甘く切ない痛みを覚えた方も
多いのではないでしょうか。
恋愛の悩みに寄り添う詩や、
先人たちが残した名言には、
私たちが言葉にできずにいる
複雑な感情を解きほぐしてくれる力があります。
今回は、
この詩に隠された
「インサイト(本音)」
を紐解きながら、
大人の恋の歩き方について
少しだけお話しさせてくださいね。
à partir du 13 juillet 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
曖昧な幸せ

君の
見え透いた嘘
とっくに気がついてる
だけど
僕は騙されたふり
そんな
曖昧な幸せに
二人
身を委ねようか
あらゆる策略の中でも最も巧みなのは、仕掛けられた罠に落ちてみせること
相手の
「見え透いた嘘」
に気づいているのに、
あえて指摘せずにいる。
それを
「私って弱いのかな」
「嫌われるのが怖くて逃げているだけなのかな」と、
ご自身を責めてしまう夜もあるかもしれません。
追及してしまえば、
この脆くも美しい関係が
音を立てて崩れてしまうかもしれない。
本当のことを知るのが、
何よりも怖いから——。
でも、本当にそれは
「弱さ」なのでしょうか?
ここで、
17世紀フランスのモラリストであり
哲学者、ラ・ロシュフコーの箴言(しんげん)をご紹介します。
« La plus subtile de toutes les finesses est de savoir bien feindre de tomber dans les pièges que l’on nous tend. »
— あらゆる策略の中でも最も巧みなのは、仕掛けられた罠に、わざと気づかぬふりをして落ちてみせることだ。
フランス語で
「気づかぬふりをする(feindre)」
という響きには、
どこか芝居がかった、
優雅な諦念が含まれています。
そう、
「気づいていながら騙されたふりをする」
というのは、
決してあなたの弱さや愚かさではありません。
むしろ、
人間関係の機微を理解した大人にしかできない、
一つの高度な処世術であり、
関係を長引かせるための
「愛の知性」
だと捉え直すことができるのです。
言葉なんてほんとのことを言うためのものじゃない
江國香織さんの
『きらきらひかる』(1991年)
かつて夢中になった小説、
覚えていますか?
アルコール依存気味の妻・笑子と、
同性の恋人がいる夫・睦月。
世間が押し付ける「普通の夫婦」の枠組みから
軽やかに外れた二人が、
それでもお互いを深く慈しみながら
暮らしていく物語です。
作中で、
笑子は正直で誠実すぎる夫に対して、
こんな風に感じています。
「言葉なんてほんとのことを言うためのものじゃないと思っている」
この感覚は、
るぅにぃ様の詩にある
「見え透いた嘘」や
「騙されたふり」と、
とても美しい形で地続きになっています。
誠実であること
イコール「すべてを包み隠さず言葉にして暴くこと」
ではありません。
時には黙っていること、
嘘を嘘のまま
優しく飲み込んであげることこそが、
二人の小さな世界を守る
盾になりうるのです。
世間の人々は言うかもしれません。
「そんなの不健全だ」
「正しい形じゃない」と。
でも、笑子が言うように、
「このままで十分自然なのに、なぜいけないのか」。
世間的な正解の型紙に
無理やり自分たちを押し込む必要なんてありません。
二人にとって心地よい歪みであれば、
それは誰にも侵せない正解なのです。
人は、人を愛していると思い込み、実は自分自身だけしか愛していない
それでも、
不確かさに身を委ねる日々には、
ふと足元が揺らぐ瞬間があります。
でも、忘れないでください。
不確かさに耐えられないことは
弱さではありませんが、
逆に言えば、
関係性に
「絶対的な保証」や「白黒の決着」を
求めすぎることこそが、
愛から遠ざかる態度だとも言えるのです。
恋愛にはもとから、
多かれ少なかれ嘘や演技が
織り込まれているもの。
だから
「嘘に気づいているのに委ねる自分」を
不健全だと責めないでくださいね。
ただ、ここで一つだけ、
自分自身の心にそっと
問いかけてほしい言葉があります。
作家であり僧侶であった
瀬戸内寂聴さんの名言です。
「人は、人を愛していると思い込み、実は自分自身だけしか愛していない場合が多い。」
ドキッとする言葉ですよね。
あなたが今の曖昧さを
受け入れているのは、
「不完全な彼そのものを深く愛しているから」
でしょうか?
それとも、
「一人になる寂しさを埋めてくれる存在として、
ただ彼を必要としているだけ」
なのでしょうか?
この問いには、
優劣も善悪もありません。
ただ、静かに自分の心と
対話してみてください。
その答えの輪郭が少しでも見えたとき、
あなたが「これからどうしたいか」という
未来へのチケットが、
自然と手の中に握られているはずです。
fin d’un début
ある始まりの終わり
カフェ・ボンボン(Café Bon Bon)で甘さのグラデーションを楽しんで
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

白か黒か決められない、
そんな曖昧な気持ちの夜は、
スペイン生まれの可愛らしいコーヒー
「カフェ・ボンボン」を作って、
一息つきませんか?
エスプレッソにたっぷりの
コンデンスミルク(練乳)を注いだ、
グラスの中で層になる
フォトジェニックなドリンクです。

Recipe
- グラスにコンデンスミルクを注ぐ 透明な耐熱グラスの底に、コンデンスミルクを大さじ1〜2杯ほど、お好みの甘さで入れます。
- エスプレッソを静かに注ぐ 淹れたてのエスプレッソ(または濃いめに淹れたコーヒー)を、スプーンの背や氷に沿わせながら、ゆっくりと静かに注ぎます。
- 完成! 白と黒の美しい2層のグラデーションの出来上がり。最初は混ぜずにそのまま一口。底の甘さと上の苦さを別々に楽しみ、少しずつ混ぜながら味わいの変化を楽しみます。
ちょい足しアレンジ&日本の豆知識
エスプレッソマシンがなくても大丈夫。普段飲んでいる市販のアイスコーヒーの底に、いちごにかける市販のコンデンスミルク(チューブの練乳で十分です!)を沈めるだけで、即席カフェ・ボンボン風になります。
日本の昔ながらの純喫茶で出てくる「冷コー」の底にガムシロップが沈んでいるあの感じに、少しミルクのコクとノスタルジーを足したような、ほっとする甘さですよ。
曖昧な関係のグラデーションは、
苦味と甘さが混ざり合うカフェ・ボンボンのように、
今のあなたを形作る大切な味わいです。
焦らず、
自分の心にだけは嘘をつかずに。
あなたの恋が、
いつか優しい温度で
満たされますように。
またね!

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by るぅにぃ
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
あなたの「恋」を、ぜひここに
誰かに話すほどではないけれど、
自分の中では忘れられない瞬間。
言葉にできないほど切なかった夜や、
今でも胸が温かくなる記憶。
あなたの心の中にある大切な『恋』の欠片を、
少しだけお裾分けしていただけませんか?
※お送りいただいたメッセージは、編集部にて大切に拝見いたします。
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