永遠の片想い | 冬の夜、ロラン・バルトの言葉とコンブチャの泡に揺られながら。所有しない愛という「聖域」が、冷えた心を解かしていく。
À Tokyo, 19 heures.
2月15日、日曜日の夜。
立春を過ぎてもなお、
指先を刺すような、
冷たい空気が街を包んでいます。
今夜、私たちのささやかな
「一かけらの今」
を彩るのは、
ᘔꩢ様による一篇の詩、
「永遠の片想い」
です。
@hi1xyCtsT44066
誰かを思う熱が、
冬の夜のしじまに、
溶けていくような —
冷えた心に、
そっとカイロを忍ばせるような —
そんな優しい時間のはじまりです。
お気に入りのマグを片手に、
今夜も言葉の海へ、
一緒に漕ぎ出してみませんか。
à partir du 15 février 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
永遠の片想い

あなたの事が大好き
だけど付き合いたいとか
結婚したいとか思ってないの
だってあなたは私の「推し」だから
私のものにも誰のものにもならないで
時々あなたの視界のすみっこに居れたらそれでいいの
私あなたに永遠に片想いしてるから
L’Attente Purifiée — 浄化された『待つこと』の美学
所有しないという、もっとも贅沢な選択
エメラルドグリーンのソーダ水。
窓ガラスが結露で白く曇り、
外の世界が印象派の絵画のように、
ぼやけて見える午後。
私はふと、ᘔꩢ様の
「永遠の片想い」
という詩を読み返し、
心の奥がふんわりと、
解けていくのを感じました。
「あなたの事が大好き
だけど付き合いたいとか
結婚したいとか思ってないの」
この一節に触れたとき、
私はかつて大学の、
騒がしいカフェテリアで、
友人たちと夜通し語り明かした
「愛の定義」
を思い出していました。
あの頃の私たちは若く、
そして何より
「所有すること」
に躍起になっていた。
誰かの恋人
— という肩書きを手に入れ、
指輪という契約で未来を縛り、
相手の時間を一分一秒まで、
支配すること — 。
それが愛の到達点だと、
疑いもしなかったのです。
けれど、この詩が描く景色は、
それとは正反対の場所にあります。
「付き合いたいと思わない」という、
一見、冷淡にも聞こえる言葉、
その裏側に隠されているのは、
対象を一切汚さず、
“ありのままの光”
として保存しておきたいという、
極めて高い精神性です。
「推し」という現代的な言葉は、
実はかつての貴婦人たちが、
手の届かない騎士に捧げた
「宮廷愛(Amour courtois)」
に近いのかもしれません。
自分のものにならないからこそ、
その輝きは永遠に、
損なわれることがない。
それは、消費社会の中で、
何でもすぐに手に入れ、
飽きたら捨ててしまう、
そんな現代に対する、
静かで、
“エレガントな反逆”
そんなふうにさえ思えるのです。
ロラン・バルトが教えてくれた「恋の証」
ここで、私が大切にしている、
一冊の本の話をさせてください。
かつて私が舞台に立ち、
夜の闇の中で、
「欲望の剝き出し」を浴びていた頃、
楽屋の隅で、
ボロボロになるまで読んでいたのが、
ロラン・バルトの
『恋愛の演習』
“Fragments d’un discours amoureux”
でした。
バルトはその中で、
こんな言葉を遺しています。
« Est-ce que je suis amoureux ?
— Oui, puisque j’attends. »
(私は恋をしているのか?
— YES、私は“待っている”のだから。)
「待つこと」を、
恋の受動的な苦しみではなく、
自分が恋をしていることの
「能動的な証明」
として捉える。
このバルトの視点は、
ᘔꩢ様の詩に通底する
「永遠の片想い」
の肯定感と、
驚くほど美しく共鳴します。
「視界のすみっこに居れたら、
それでいい」
と願うとき、
私たちは常に相手を
「待つ」
状態にあります。
彼が笑うのを待ち、
彼が輝くのを待ち、
彼がそこに存在し続けてくれる、
それだけを願う。
この「待つ」状態こそが、
愛の純度を最も高めてくれるのです。
誰かのものになれば、
そこには
「期待」「要求」
という名の、
不純物が混じり始めます。
「なぜ連絡をくれないの?」
「なぜ私だけを見てくれないの?」
そんな濁った感情から解放され、
ただ相手が存在している
という奇跡を享受する。
それは、かつて学歴もお金もなく、
街の片隅でただ空を見上げていた私が、
誰にも奪われない
「心の豊かさ」
を見出した瞬間の、
透明な感覚に似ています。
終わりの見えない閉塞感。
今の世界は、
私たちに
「早く結果を出せ」「正解を選べ」
と急かしてばかりです。
けれど、恋愛くらいは、
結果を求めない
「未完の美」
であってもいい。
バルトが言うように、
ただ「待っている」こと、
その状態そのものを愛おしむ、
その余裕が、
私たちのギスギスした心を、
救ってくれるのではないでしょうか。
視界の「すみっこ」にある、本当の居場所
「時々あなたの視界のすみっこに
居れたらそれでいいの」
この謙虚で、
それでいて強烈な一文は、
現代を生きる女の子たちの、
新しい「お守り」になるはずです。
私たちはつい、
誰かの「中心」になろうと、
必死になってしまいます。
SNSのフォロワー数、
いいねの数、
そして好きな人の優先順位。
けれど、
中心にいるということは、
常に
「引きずり下ろされる恐怖」
と隣り合わせだ、
ということでもあります。
あえて
「すみっこ」を定位置に選ぶこと。
それは決して、
自分に自信がないから —
ではありません。
むしろ、
自分という個をしっかりと確立し、
相手の人生を尊重できる、
自立した女性だからこそ選べる、
賢明な戦略なのです。
フランス語には
« L’esprit d’escalier »
(階段の機知)
という面白い言葉があります。
別れ際に、
気の利いた言葉を思いつかず、
階段を降りる頃になってようやく
「ああ言えばよかった」
と思い出す……
そんな不器用さを指す言葉です。
恋愛なんて、
いつだって
「階段の機知」
の連続です。
完璧に振る舞おうとすればするほど、
空回りして、
自分を嫌いになってしまう。
でも、
「片想い」
という距離感を保っていれば、
その不器用ささえも、
愛おしいエッセンスに変わります。
相手に投影した理想を、
自分の内側でゆっくりと、
醸成させていく。
そのプロセスこそが、
私たちを
「ただの女の子」
から
「思慮深い女性」
へと成長させてくれるのです。
冬から春へ、自分を「醸す」時間
2月の冷たい風が吹く夜、
この詩を読みながら、
私が感じたのは、
「ホッとする」
という安堵感でした。
それは、
無理に誰かと繋がらなくてもいい、
無理に
「両想い」
というゴールを目指さなくても、
「私の抱いているこの感情は、
既に完成されているんだ」という、
肯定。
私たちは、
もっと自分の感情に、
誇りを持っていいはずです。
誰かに認められなくても、
契約を交わさなくても、
あなたの心の中で燃え続けている、
その小さな灯火は、
間違いなく本物なのだから。
貧しかった頃の私が、
なけなしのお金で買った古本と、
一杯の安コーヒーで、
世界一幸せな気分になれたように。
「永遠の片想い」
という名の
精神的貴族主義
は、私たちがこの冬を、
そしてこれからの人生を、
しなやかに生き抜くための
«Un petit miracle»
(小さな奇跡)
になるに違いありません。
fin d’un début
ある始まりの終わり
L’Élixir d’Hiver — 冬を醸す、自家製コンブチャ・アレンジ
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

パリの「オシャレ女子」の間では今、
「コンブチャ(Kombucha)」
が話題。
日本ではポピュラーだけれど、
発酵という時間をかけて、
育まれるこの飲み物はまさに、
「待つこと」
を楽しむ今の気分にぴったり。
冬の冷えには、
ほんの少しのアレンジで、
温かみと彩りを添えてみて。

コンブチャの持つ微細な気泡は、まるで恋に落ちた瞬間の胸のときめき。
「フレンチ」ではないけれど、生姜の成分がじわりと体を芯から温めてくれます。
発酵という「時間」が作り出した深い味わいを、ロラン・バルトの言葉と共に、ゆっくりと喉に滑り込ませてみて。
Recipe
- コンブチャ(市販のプレーンタイプ):150ml
- ジンジャーエール(辛口):50ml(コンブチャの酸味をまろやかにします)
- フローズン・ラズベリー:3〜4粒(キッチュなピンク色を添えて)
- 乾燥ローズペダル(またはローズヒップ):少々
- 薄切り生姜:1枚
Method
- グラスに薄切り生姜とラズベリーを入れ、スプーンの背で軽く潰します。
- コンブチャを注ぎ、ゆっくりとジンジャーエールを加えます。
- 仕上げにローズペダルを散らせば、まるでマリー・アントワネットの庭園のような一杯に。
明日、
あなたが鏡の中の自分を見たとき、
今夜の言葉たちが、
あなたの瞳を少しだけ、
優しく輝かせていますように。
次は、あなたが誰かに贈る
「言葉」
について、
私に聞かせてくれませんか?

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by ᘔꩢ
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
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