君じゃなきゃ | 欠落という名の贅沢な愛について。ジャック・ラカンの定義とLait d’or(レ・ドール)の灯火が、不器用な後悔を美しい記憶へと変えていく。
2月下旬の東京の街。
春を待つ微かな空気が、
胸をくすぐる頃。
今夜お届けする featured poem は、
Kaze様の
「君じゃなきゃ」
@teru_320_76
冷えた窓ガラスに、
指先でそっと名前を書くような、
そんな静かな切なさが、
胸に広がります。
後悔という名の
冬の風に吹かれながらも、
たった一人の「君」を想い続ける。
その純粋さは、
まるで古い映画のワンシーンのように、
私たちの心の奥底にある
柔らかな部分に触れてくるのです。
少しだけ部屋の明かりを落として。
自分の中にある
「欠落」
さえも、愛おしく思えるような、
そんな言葉の魔法にかかってみませんか?
à partir du 22 février 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
君じゃなきゃ

君はいない
もう手の届かない
本当の想い
伝えられぬまま
どうして
あの時
声をかけなかったのか
後悔ばかりが
胸を去来する
君がいない
君がいない
心に空いた穴は
君じゃなきゃ埋められない
君じゃなきゃ
L’amour, c’est donner ce qu’on n’a pas. ― 持っていないものを、与えるということ
サン・マルタン運河のほとりで、欠落を見つめる
冬の夜、
サン・マルタン運河沿いを歩いていると、
ふと自分の影がいつもより長く、
そしてどこか頼りなく、
儚げに見えることがあります。
抜け出した大学の退屈な講義。
タバコの煙と古本が、
混ざり合ったような香りのするカフェ。
安いエスプレッソを啜りながら考えていたのは、
いつも「愛の正体」についてでした。
あの頃の私は、若くて、
そしてひどく怯えていた。
懐のことね。
もちろん、私はしたたかで、
ゲームオーバーは回避できたけれど、
心には決して埋まることのない
「穴」
が開いていた。
誰かに愛されたいと願いながら、
何を差し出せばいいのかもわからず、
ただ自分の不完全さを呪っていたのです。
そんな時、ある心理学の書物の中で、
ジャック・ラカンの言葉に出会いました。
« L’amour, c’est donner ce qu’on n’a pas. »
― 愛とは、自分が持っていないものを、
それを求めていない人に与えることである。
『セミネール 第8巻:転移(Le transfert, 1960-1961)』
自分が持っている
「美しさ」や「富」を与えるのは、
どこにでもある、
ありふれたこと。
本当の愛とは、
自分の中に「欠けているもの」を認め、
その「欠如」そのものを相手に差し出すこと。
そして、
「相手もまた不完全である」
そのことを受け入れること。
Kaze様の「君じゃなきゃ」を読んだとき、
私はこのラカンの難解で、
けれどあまりにも慈愛に満ちた
“洒脱さ”
を思い出さずにはいられませんでした。
後悔という名の、美しい冬の星座
詩の中で繰り返される、
「君がいない」という叫び。
「どうしてあの時声をかけなかったのか」
という、胸を去来する後悔。
私たちは、
失恋や片想いの痛みに直面したとき、
その「後悔」を早く消し去りたい、
忘れてしまいたいと願います。
けれど、この詩が描く後悔は、
どこか星のように清らかです。
伝えられなかった想い、
届かなかった指先、
そして今ここにいない「君」。
それらはすべて、
主人公にとっての「欠落」です。
「君じゃなきゃ埋められない」
この一行は、一見すると
絶望のように聞こえるかもしれません。
けれど、
このコラムをここまで読んだあなたなら、
気づいているはずです。
その穴を無理に他の誰かで埋めようとしない、
潔さこそが、愛の「誠実さ」なのだ、
ということに。
「効率」や「正解」を求める社会の空気。
「無駄な後悔はしない方がいい」
「次の恋へ早く進むべき」。
そんなアドバイスは、
時に私たちの心を砂漠にしてしまいます。
いいじゃない、
埋まらない穴を抱えたまま、
冷たい夜風に吹かれていても。
その穴があるからこそ、
私たちは「君」という存在が、
どれほど特別だったのかを知ることができる。
その「欠落」こそが、
私たちが人間であるための、
そして誰かを愛するための、
大切なマニフェストなのだから。
社会の喧騒と、個人的な沈黙
視点を広げてみれば、
私たちの社会そのものが、
大きな
「欠落」
に苦しんでいるのかもしれないわ。
けれど、そんな大きな
「物語」
に飲み込まれそうになるときほど、
私たちは自分の心の中にある、
小さな、個人的な痛みを、
大切にしなければならないのよ。
かつて私が学んだ知恵は、
「豊かさとは、持っているものの数ではなく、
失ったものをどれだけ深く愛せるか」
ということだったの。
お金がなくても、未来が不透明でも、
心の中に
「君じゃなきゃダメなんだ」
と思えるほどの、
大切な欠片を抱いている人は、
実はとても贅沢な時間を生きているはず。
Kaze様の言葉は、
私たちに
「立ち止まること」
を許してくれます。
「声をかけなかったあの時」の自分を、
責めるのではなく、
ただ静かに抱きしめてあげる。
その瞬間、後悔は「痛み」から、
人生を彩る「深い青色」の記憶
へと変わっていくのです。
冬の終わりに、自分を許すためのレッスン
冬から春へと、
季節が移り変わるこの時期は、
心も揺らぎやすいものです。
もし、あなたが今、
誰かへの想いを抱えたまま、
一歩も前に進めないような、
そんな気持ちでいるのなら。
どうか、その
「止まってしまった時間」
を否定しないであげてほしいの。
ラカンが言うように、
あなたが
「持っていないもの
(=君との未来、伝えられなかった言葉)」
を抱えていること自体が、
愛の証よ。
不完全なままのあなたでいい。
君じゃなきゃ埋められない穴を持ったまま、
あなたは今日も美しく生きている。
この詩を読み終えたあと、
少しだけ心が軽くなっている自分に、
気づいた人は多いはず。
それは、あなたが自分の
「欠落」
と仲直りできた証拠。
冬の終わりの冷たい空気が、
少しだけ柔らかく感じられたなら、
それはもう、
「新しい季節の始まり」なのです。
fin d’un début
ある始まりの終わり
Lait d’or(ゴールデンラテ)― 黄金色の光を、心に。
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

今夜、この切なくも美しい、
恋愛詩のお供に選んだのは、
「Lait d’or(レ・ドール)」
いわゆるゴールデンラテです。
ターメリックの鮮やかな黄金色は、
まるでお部屋の中に小さな太陽を招き入れたよう。

ゴールデンラテは、
冷え切った体を芯から温め、
沈んだ気持ちを優しく上向かせてくれる、
魔法の飲み物です。
風邪のひき始めや、
少し心が疲れたときに。
Recipe
- 牛乳(またはオーツミルク):200ml
- ターメリック(パウダー):小さじ1/2
- 生姜(すりおろし、またはパウダー):少々
- シナモンパウダー:少々
- 黒胡椒:ほんのひとつまみ(※ターメリックの吸収を高める大切なエスプリです)
- 蜂蜜(またはメープルシロップ):大さじ1(お好みで)
- ココナッツオイル:小さじ1/2(コクが出て、より本場の味に)
Method
- 小鍋にミルクを入れ、弱火で温めます。
- ミルクが温まってきたら、ターメリック、生姜、シナモン、黒胡椒、ココナッツオイルを加えます。
- 泡立て器でくるくると、優しく混ぜ合わせてください。沸騰させないように気をつけて。
- カップに注ぎ、最後に蜂蜜で甘さを整えます。
黄金色のラテを一口飲めば、
スパイスの香りが鼻を抜け、
体中の細胞が、
ゆっくりと解けていくのを感じるはず。
「君じゃなきゃ」
という想いを抱えたまま、
この温かな飲み物で、
自分を慈しんであげてください。
Kaze様の言葉と、
温かなLait d’or。
今夜のこの時間が、
あなたの明日を照らす、
小さな光となりますように。
次は、あなたが心に秘めている
「忘れられない言葉」
について、
お話ししてみませんか?

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by Kaze
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
恋愛詩を投稿してみませんか?
- 選出された恋愛詩にAmazonギフト券をプレゼント
- 当サイトにて掲載(著作権はご投稿者様に帰属します)



















