懐かしさの向こう| コロンブスになれなかったあなたへ。江國香織の「神様のボート」と、クラッキング・アイスラテの軽やかな音が、漕ぎ出せない船をそのまま抱きしめてくれる。
恋は、勝ち取るためではなく、
そっと手放すために存在しているのかもしれない。
今日は、そんな恋の詩と、
一つの名言について綴っていきます。
à partir du 2 août 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
懐かしさの向こう

あの人は
行ってしまった
懐かしさの向こうに
海の輝き
遥か彼方に
その場所はある
コロンブスには
なれそうもない
人魚のように
泡になりたい
光の中に
溶けていきたい
愛とは、慰めではない。光である。
あの人は、「懐かしさの向こう」という、
時間的にも心理的にも
遠く隔たった場所へ行ってしまった。
海の輝きの、そのまた彼方に。
新しい大陸を目指して
船を漕ぎ出したコロンブスのようには、
自分はなれそうもない。
けれど、彼女は決して、無力さを責めてはいない。
ただ静かに、
「漕ぎ出していく力が、今の自分にはない」
という事実を、
そのまま受け止めている。
フランスの哲学者、
シモーヌ・ヴェイユは、
こんな言葉を残している。
« Love is not consolation, it is light. »
— 愛とは、慰めではない。光である。
愛は、
傷ついた心を優しく包んでくれるものだと、
私たちはつい思ってしまう。
けれどヴェイユの言葉は、
もう少し違う場所を指していると思う。
愛とは、慰められることではなく、
ただそこに在って、
静かに照らしているもの。
触れられなくても、
届かなくても、
その光は消えない。
この感覚は、
アンデルセンの『人魚姫』の結末とも重なる。
人魚姫は、
最後のチャンスとして差し出されたナイフを、
王子を殺すために使うことができず、
海へ身を投げて泡になる。
けれど原作の物語は、
そこで終わらない。
泡になった彼女は、
その真心によって空気の精へと生まれ変わり、
自由に世界を巡りながら、
誰かを幸せにする存在になっていく。
「泡になりたい」「光の中に溶けていきたい」
という詩の言葉は、
敗北の言葉ではないの。
それはむしろ、
勝ち取ることを手放した先にある、
もう一つの愛のかたち、
なのかもしれない。
「私たちはね、神様のボートに乗っているの。だから、どこへでも行ってしまうのよ」(江國香織『神様のボート』より)
もう一つ、
この詩とリンクする小説がある。
江國香織さんの『神様のボート』。
骨ごと溶けるような恋をした母・葉子と、
その恋から生まれた娘・草子の物語。
「必ず戻る」と言い残して去っていった恋人を、
母は信じ続けている。
だから彼女は、ひとつの場所に留まることができない。
街から街へ、部屋から部屋へ、
まるで漂流するように暮らしを移していく。
世間の「普通」や「現実」から、
少しずつ踏み外していく母の、
あまりにも純粋な世界。
娘の草子は、
その狂気にも似た深い愛おしさを抱きながら成長し、
やがて自分の足で、
母とは違う現実の方へと歩き出していく。
作中で、母はこんな言葉を残している。
「私たちはね、神様のボートに乗っているの。だから、どこへでも行ってしまうのよ」
去っていった恋人も、
過ぎ去った時間も、
やがて手元を離れていく娘も。
この物語は、
それらを「失われたもの」として嘆くのではなく、
ただ流れていく運命として、
まるごと受け入れている。
しがみつかないことは、
諦めることとは違うのだと、
この一冊は教えてくれる。
諦めることは、永遠に失われない美しいものを作り出す
「コロンブスにはなれそうもない」
という彼女の言葉を、
責める必要はどこにもないのだと思う。
今はまだ、勇気を持てなくてもいい。
漕ぎ出せない自分を、
無理に船に乗せなくてもいい。
「懐かしさの向こう」に、
恋心をそっと預けてしまうこと。
それは、動かなかったことの証ではなく、
その関係を、誰にも損なわれない美しいものとして、
静かに閉じ込めておくための選択…
でもあるのだと思う。
手に入れられなかった恋は、
手に入れた恋よりも、
時に長く、静かに、光り続ける。
fin d’un début
ある始まりの終わり
クラッキング・アイスラテ (Cracking Iced Latte)、「パリパリ」と割れるチョコがあなたを「クスッ」とさせてくれそう
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

クラッキング・アイスラテ (Cracking Iced Latte)、
「パリパリ」と割れるチョコがあなたを
「クスッ」とさせてくれそう。
ロンドンやソウルの感性カフェで話題になっている、
クラッキング・アイスラテ。
カップを押すと、
表面のチョコレートが「パリパリッ」と音を立てて割れる、
耳と舌の両方で楽しむASMR体験型のドリンク。
割れたチョコがラテに溶け込んでいく様子は、
少し重たくなった気持ちを、
ふっと軽くしてくれる。

おうちでちょい足し再現レシピ
- 柔らかいプラカップ、または薄手のグラスの内側に、溶かしたコーティングチョコ(または板チョコにココナッツオイルを少量混ぜて溶かしたもの)を薄く塗る。
- 冷凍庫で5分ほど冷やし、チョコをしっかり固める。
- 氷、ミルク、エスプレッソ(または抹茶ラテ・濃厚な紅茶でも)を注げば完成。
グラスを押すと、少しだけ、クスッと笑えるはず。
漕ぎ出せない船があってもいい。
泡になって、
光の中に溶けていく恋があってもいい。
それもまた、誰にも壊されない、
一つの美しい愛のかたちだから。

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by ある光
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
あなたの「恋」を、ぜひここに
誰かに話すほどではないけれど、
自分の中では忘れられない瞬間。
言葉にできないほど切なかった夜や、
今でも胸が温かくなる記憶。
あなたの心の中にある大切な『恋』の欠片を、
少しだけお裾分けしていただけませんか?
※お送りいただいたメッセージは、編集部にて大切に拝見いたします。
恋愛詩を投稿してみませんか?
- 選出された恋愛詩にAmazonギフト券をプレゼント
- 当サイトにて掲載(著作権はご投稿者様に帰属します)



















