君の名を呼ぶ | 雨音に紛れる追憶のモノローグ。マヤ・アンジェロウの至言とうす紫色のウベ・ラテが、行き場のない後悔を「自分への赦し」へと溶かしていく。
東京は夜の7時、
春の足音。
今夜お届けする
3月の featured poem は、
揺れる渚様の恋愛詩、
「君の名を呼ぶ」。
@ZEN48833beat
三月の雨は、
冬の終わりと春の始まりを繋ぐ、
少しだけ感傷的な調べ。
「もういない」と分かっていても、
心が雨音の中に、
あの人の声を探してしまう……。
そんな、不器用で真っ直ぐな、
あなたのための夜の読書です。
今夜は、
街のノイズを少しだけ遠ざけて、
紫色の優しい一杯と共に、
言葉の海に浸ってみませんか。
à partir du 22 mars 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
君の名を呼ぶ

君の名を呼ぶ
もう君はいないのに
呼んだって
君は来ないのに
雨音が君の声に
似ている時は
傘をささずに会話する
君がついた嘘を
数えながら眠る夜は
月が静かに欠けてゆく
哀しみのノイズ
痛みのノイズ
責めたてる
後悔のノイズ
君の名を呼ぶ
もう君はいないのに
不完全な私を抱きしめるための、赦しのレシピ
雨上がりの通りを歩いていると、
ふと自分の足音さえも
「誰かを呼ぶ声」
に聞こえることがあります。
揺れる渚様の詩
「君の名を呼ぶ」
を読んだとき、
私の胸に去来したのは、
そんな逃げ場のない、
切実な追憶でした。
「君の名を呼ぶ
もう君はいないのに
呼んだって
君は来ないのに」
この、あまりにも無垢で、
そして残酷なリフレイン。
私たちは大人になるにつれて、
「終わったことは忘れなさい」
「前を向いて歩こう」
という言葉という名の、
強迫観念に晒されます。
まるで、過去に立ち止まることが、
悪であるかのように。
けれど、この恋愛詩が描き出すのは、
理性では制御できない
「心の居場所」です。
雨音を会話に変え、
月が欠けるように自分を削りながら、
つかれた嘘を数える夜。
そこにあるのは、
単なる悲しみではなく、
自分を責め立てる
「後悔のノイズ」です。
「あの時、もっと優しくしていれば」
「あの嘘を見逃してあげられたら」
そんな自責の念は、
一度耳につくと、
どんな高級な耳栓をしても、
消えてはくれません。
大学で哲学の端くれをかじっていた頃、
私は「不在」という存在について、
考えたことがありました。
でも、本当の意味でそれを理解したのは、
大学を中退し、
夜の世界で躍っていた、
あの寒くて孤独な冬だった気がします。
スポットライトの影に、
もういない誰かの視線を探してしまう。
その「ノイズ」こそが、
私たちが
誰かを心底愛した
という、
唯一の証明なのかもしれません。
マヤ・アンジェロウが教える「もう一度」の勇気
ここで、
アメリカの偉大な作家であり詩人、
マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)
の言葉を引用させてください。
Have enough courage
to trust love one more time
and always one more time.
― もう一度、そして何度でも、
愛を信じる勇気を持ちなさい。
この言葉は、
彼女が波乱に満ちた人生の中で、
何度も傷つき、
それでもなお人間への愛を捨てなかった、
強さから紡ぎ出されたものです。
「信じる」ということは、
決して「忘れる」ことではありません。
むしろ、
傷ついた記憶も、
自分を責める後悔も、
すべて抱えたまま
「それでもいい」
と一歩を踏み出す、
静かな決意なのです。
私たちはよく、
忘れるための方法を探してしまいます。
けれど、
揺れる渚様の詩が、
私たちに与えてくれるのは、
忘れる技術ではなく、
「まだ好きでいてもいい」
という許可
なのではないでしょうか。
「君の名を呼ぶ」
という行為は、
相手を呼び戻すためではなく、
自分の中にまだ残っている、
愛の温度を確かめるための儀式。
たとえ相手が来なくても、
名を呼ぶ瞬間のあなたは、
誰よりも誠実で、美しい。
私は、そう思うのです。
社会の喧騒と、私だけの静寂
今、SNSを開けば、
誰かの
「完璧な恋愛」
や
「効率的な立ち直り方」
が溢れている。
政治や社会の情勢も、
常に分断と主張の繰り返しで、
私たちの繊細な感情は、
まるで不要なノイズのように、
冷たく扱われてしまう。
けれど、
この「メランコリー」には、
どこか甘美で、
思索的な響きを持つ言葉があります。
悲しみの中に浸ることは、
決して停滞ではありません。
それは、
自分の内側にある豊かさを耕すための、
大切な時間。
「君がついた嘘を
/ 数えながら眠る夜」
この一行には、
かつて私が安アパートで、
コインを集めていた頃のような、
切実で、
けれど不思議と透明な精神性が宿っています。
貧しさや孤独の中でこそ見える、
月の美しさ。
嘘さえも、
愛の欠片にしてしまう、
その高い精神性。
それこそが、
私たちが
「恋と共に生きる」
ための、
最大の知恵なのかもしれません。
思い出してしまう自分を、責めなくていい
「後悔のノイズ」
に責め立てられる夜、
あなたはこう自分に
言ってあげてください。
C’est l’amour, encore une fois.
(これもまた、もう一度の愛なのよ)と。
忘れようとすればするほど、
記憶は鮮明に、
鋭利になります。
だったら、
いっそ雨の中へ出て、
傘をささずに会話をしてもいい。
「もういない」という事実と、
「まだ愛している」という真実。
その矛盾を抱えたまま、
生きることは、
不自然なことではありません。
揺れる渚様の詩を読み終えたあと、
あなたの心に、
小さな「許可証」が届きますように。
「まだ名を呼んでもいいんだ」
「まだ思い出の中にいてもいいんだ」
と、
自分の心に寄り添えたとき、
そのノイズはいつの間にか、
優しい子守唄に変わっているはず。
冬のコートを脱ぎ捨てるように、
自分を責める鎧を脱いで。
春の柔らかな光の中で、
何度でも、何度でも、
自分の愛を信じてみませんか。
fin d’un début
ある始まりの終わり
Ube Latte de Paris(ウベ・ラテ 〜すみれ色の追憶〜)
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

今夜の詩に寄り添うのは、
パリの感度の高い
コーヒーショップでも
見かけるようになった、
「ウベ・ラテ」。
フィリピン産の紫芋(ウベ)を使った、
この優しいうす紫色のラテは、
まるで夜明け前の空や、
少しずつ欠けていく
月のような色をしています。

この色の正体は、アントシアニン。心と身体を癒し、視界をクリアにしてくれる成分です。
「後悔のノイズ」で疲れた目に、この穏やかな紫は、そっと効いてくれるはず。
Recipe
- ウベ・パウダー(または紫芋フレーク):大さじ1
- お湯:少々(練る用)
- 牛乳(またはオーツミルク):200ml
- コンデンスミルク(または蜂蜜):お好みで
- バニラエッセンス:1滴(パリらしい香りの魔法)
Method
- カップにウベ・パウダーと甘みを入れ、少量の熱湯でペースト状になるまでよく練ります。ここでダマをなくすのが、滑らかな口当たりへの近道。(焦らず、ゆっくりね)
- 温めたミルクを、少しずつ注ぎ入れます。
- 仕上げにバニラエッセンスを1滴。
- 最後にお好みで、薄紫の泡の上に、ほんの少しだけ銀色のシュガーを散らして。それは、夜空に浮かぶ小さな星の欠片。
この、ぽってりとした甘さと、
大地のエネルギーを感じる
ウベの香りは、
傷ついた心を
ふかふかの毛布で包み込んでくれます。
うす紫の海に、
あなたの後悔をそっと溶かして。
Bon appétit.
あなたの夜が、
やさしい光で満たされますように。

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by 揺れる渚
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
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