ホントウノソラ
1+1=2
1+1=2
じゃなくてもいい
あなたはそういうけど
わたしはやっぱり
2でありたい
でも
背伸びばかりしてるから
ほら
石ころにつまずいた
あなたは苦笑いして
わたしをそっと
受け止める
0.5のわたしを
0.5のやさしさで
スミレ
憧れの
女優のように
なりたくて
大きな瞳
スッとした鼻
シャープなあご
理想の顔を
絵に描いて
あなたに見せた
返ってきたのは
たった一言
「スミレは
バラには
なれない」
傷つきながら
眠りについて
目覚めた朝
枕元に
スミレの花
シアワセの分量
どこまでも
青くて
冷たい
冬空を
見上げて
あなたが
つぶやく
ソラノムコウ
手を伸ばせば
あなたに
触れることができる
冷たさ
わたしとあなたの
心を
握りしめている
この痛みと
どちらがどれだけ
シアワセなの?
talking bird
会えるのに
会わない
伝えられるのに
伝えない
誰も知らない
2人の関係
見えないけれど
つかめる形がある
むずかしい
恋をしている
あなたは
なにも言わない
talking bird
わたしの恋に
気づかない
波紋
夕暮れの湖
水面にひろがる
静かな漣は
あなたの心みたいで
わたしが小石を
投げたくらいじゃ
何も変わらない
そんなこと
わかってる
わかってるけど
音もなく消えていく
わたしが投げた小石の
小さな波紋くらい
あなたの胸に
残してみたい
あなたの後ろ姿が
夕陽に染まるのを
見ているだけのわたし
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
ミステリー
ふわふわとした
セーターが苦手
雑誌みたいな
メイクが苦手
ハーレクインより
ハードボイルドな
ミステリーが好き
それでも
かわいいと思われたくて
あの子のことを
真似してみる
うそつきって
言われてもいい
飛ばずに消えた
シャボン玉みたいに
地面に滲んで
消えてしまってもいい
ソーダ水
君がね
君とね
君のね
名前じゃなくて
さんでもなくて
わたしのこと
君と呼ぶ
少しだけ
他人行儀で
少しだけ
したたかな
ソーダ水みたいに
甘い匂いのする
あなたの肩が
触れた
8月のはじまり
あれから
近づきも
重なりもしない
いくつかの季節
君がね
君とね
君のね
プラネタリウム
あなたは水瓶座で
わたしは魚座で
いつも隣同士だから
絶対に
見つめ合えない
肩をぶつけて
笑い合えるのに
あなたの瞳の暗さに
気づけない
水瓶座の真正面にいる
獅子座のあの人が
あなたを悲しく
させているのを
知っているから
あなたの隣で
わざと大きな口をあけて
ポップコーンを
食べてみせた
冬のプラネタリウムで
誕生日
もうすぐ
あなたの誕生日
「何が欲しい?」
わたしが聞いたら
あなたは
特別うれしそうでもなく
読みかけの本から
顔を上げずに言う
「自由な恋」
「綺麗な箱に入れて
リボンをかけて贈ったら
あなたはどうするの?」
「食べるよ
3時のおやつに
紅茶なんかと一緒に」
嘘つきな
あなた
きっと
その日が来ても
あなたは
黙って本を
読んでいるだけなのに
プロペラみたいな
花びらが落ちる
夕暮れ
ホントウノソラ
アナタハ
トウキョウニハ
ソラガナイトイフ
ホントウノソラガ
ミタイトイフ
傘を傾けて
雨空を見上げるあなたの
ホントウノソラは
どこにあるの
矢車菊のアオは悲しいと
あなたは言った
青じゃなく蒼だから
悲しいのだと
雨と矢車菊と古い文庫本と
あの日から
あなたが
わたしの中にいる
fin d’un début
ある始まりの終わり