無口な恋とシンパシー
わたしの声
遠くで鳴いている
鳥も海も裏側で
あなたへと向けている意識を
まぶたの端へと
追いやるたびに
わたしの声は
比例して聞こえてきた
声が大きくなるごとに
発する前の呼吸は長くなる
答えはこんなに近くに
存在していた
背く
小さく肩を落として
帰路についたまま
玄関で往生している
ぼんやりとモヤまで
部屋についてきた
あなたは背中を向ける
回数が増えて
声だけでは判明しない
釈然としないこと
わたしの後ろについて残る
雨足
風が長くなると
窓から夏が流れてくる
影は軽くなっていく
少しあごを上げ
カレンダーの日をめくる
予想外のタイミングで
雨足は騒ぎ走り去る
アスファルトの通り
あっという間に変色して
そうだ普段より
空を読む時期だ
シンパシー
正解さがしのシンパシーに
終止符のピリオドを打つ
いつのまにか
身についていた反応
匙を投げていい
あなたの前
素直さは実りになるといい
ささいな変化に感づく
あなただから
シンパシーの頷きは
もうやめていこう
星座とロマン
寝転んで星座を眺めると
静かな夜でも
音にあふれて
光にうずく
暗闇で眼は見開くもの
置き忘れていた
じっと動かない恋
気づいたときに
紐付ける考え
巡る創造を
止めてしまうのかな
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
つぐむ
沈黙が流れても
気にならなければ
近しい間柄なのだと
耳にした
けど底にある
わたしの本音
シンプルなことばかり
言い表すのは簡単
あなたへ発する声は
脆い分だけ鋭いから
大切につぐむ
猫の背中
しーっと息を静めて
庭にきた猫がいる
何を考えているのか
謎の眼差し
水たまりをひょいと飛ぶ
自由に伸びる背中
追いかけた姿は
知りたい憧れが
延長にあって
引き寄せられた
あなたによく似た
引力をもっているから
細波
わたしが投げれば
跳ね返ってくる
石とボール
反応した弾みを帯びて
水面に投げ入れる
さざ波は細やかに揺らぎ
影響した模様を広げ
向こう側へ渡っていく
残響を覚えるように
なにか焼きついた光景
ダイアローグ
話さないと
わからないこともあるし
無言で沁みわたる
しあわせな温度もあって
どちらも汲み取り伝わる
コミュニケーションだった
ふたりの感情表現
ひとつじゃなく違うのが
自然なダイアローグ
注意を計らうこともなく
夕焼け
焦げた夕日を
前に立ちつくすと
まだ時々いとしくなる
ふと時々さみしくなる
訳もなく胸が騒ぐのは
お祭り前の静けさに
どこか気配が似ているせい
なにかが欠けると
なにかを招く予感
今度あなたに会うときには
美しく感じるままに
過ごせそう
fin d’un début
ある始まりの終わり