笑顔 | 果たされなかった約束と切ない本音について。岩井俊二の『Love Letter』とカルダモンラテの温もりが、手放せない未練を愛おしい記憶へと変えていく。
波の音を聞くたびに、
隣にいてほしかった
誰かの横顔を探してしまう。
そんなことはありませんか?
終わってしまった恋の記憶は、
波打ち際のガラス玉のよう。
塩水に洗われて角が取れ、
光を透かして美しく輝くけれど、
触れればまだ少しだけ冷たい。
今日は、少しだけ胸がチクリとするような、
ある「恋愛詩」にまつわるお話です。
à partir du 19 juillet 2026
一かけらの今 a l’honneur de soutenir
笑顔

海の見える街
本当は
二人で来たかった
離れて暮らす
あなたは今
幸せですか
全然ですか?
私のこと
忘れましたか?
あなたの笑顔
大好きでした
約束も夢も、全部が消えたとしても
恋愛を彩る名言は数多くありますが、
愛の真髄を突いたこんな言葉をご存知でしょうか。
« Love is when the other person’s happiness is more important than your own. »
— 愛とは、相手の幸せが自分の幸せより大切に思えることだ。
アメリカの作家、
H・ジャクソン・ブラウン・Jr.が残した言葉です。
詩に綴られた、
「本当は/二人で来たかった」という
果たされなかった約束への未練。
そして、「あなたは今/幸せですか」という、
彼の現在の幸せを願うような問いかけ。
その奥には、
「私がいなくても、あなたは本当に幸せでいられるの?」という、
ちょっぴり意地悪で切実な、
嫉妬混じりの本音が透けて見えます。
「大好きでした」と過去形にすることで、
無理やり心に鍵をかけようとする彼女。
でも、無理に終わらせようとしているのは、
まだその恋が終わっていない証拠です。
「私のこと、忘れましたか?」という問いは、
彼への断ち切れない想いの裏返し。
でも、そのままでいいのです。
誰かの幸せを祈りながら、
自分を忘れないでほしいと願う。
そのアンビバレントな想いこそが、
人が誰かを愛したという
紛れもない真実なのですから。
お元気ですかー!私は、元気です!(『Love Letter』(1995年・岩井俊二監督)より)
離れて暮らす、
もう二度と会えない相手へ問いかける。
それは、岩井俊二監督の映画
『Love Letter』
で観た景色と同じです。
神戸に住む渡辺博子は、
山岳事故で亡くなった婚約者の三回忌の後、
彼が昔住んでいた小樽の住所へ、
届くはずのない手紙を出します。
「お元気ですか」と。
一面の銀世界に向かって、
博子が「お元気ですかー! 私は、元気です!」と
何度も叫ぶシーン。
悲しみや後悔といった
複雑な感情をすべて語るのではなく、
あえて「元気ですか」という
誰にでも使うシンプルな言葉に込めたことで、
その奥底にある計り知れない喪失感と、
それを乗り越えようとする強い意志が、
スクリーンのこちら側まで痛いほど伝わってきたものです。
言葉を削ぎ落とすことで、
逆に感情の深淵が浮かび上がる。
これは、儚く脆い詩にも共通する魔法です。
詩の「幸せですか」という問いもまた、
一番聞きたいこと、
言いたいことを短い言葉に
ギュッと押し込めたからこそ、
読む者の心を強く揺さぶるのでしょう。
たとえ今は離れていても、二人で過ごした時間は、なかったことにはならない
私たちは時々、
「忘れること」が前へ進むことだと
勘違いしてしまいます。
でも、想いを手放しきれない自分を
「弱い」と責める必要なんてありません。
「忘れること」と「大切にし続けること」は、
決して矛盾しないからです。
たとえ今は離れ離れになってしまっても、
二人で見た景色や交わした約束
——詩の中の「海の見える街」のように——
は、あなたの人生から消えてなくなるわけではありません。
C’est la vie(それが人生)。
相手の幸せを心から願いながら、
同時に過去の約束を心のどこかで手放せないでいる。
そんなふうに揺れ動く感情を
抱きしめたまま生きていくのも、
“今”を生きる人間の、
ひとつの愛おしさだと思うのです。
fin d’un début
ある始まりの終わり
カルダモンラテの温もりと、カルダモンブレイドのスウィート・ムービー
“こんな夜”におすすめのドリンクを紹介。

少し心が感傷に浸った夜は、
北欧の香りで自分を甘やかしてみませんか?
今、アメリカやイギリスのカフェでも
定番になりつつある「カルダモン」。
コペンハーゲンの人気ベーカリーでは、
カルダモンブレイド(編みパン)が看板商品になるほど、
北欧の日常には欠かせないスパイスです。
柑橘系のような爽やかさと、
ほんのり甘くスパイシーな香りが、
疲れた心をほぐしてくれますよ。

おうちで簡単、カルダモン・オーツミルクラテ
- お気に入りのマグカップに、濃いめに入れたコーヒー(またはエスプレッソ)を注ぎます。
- 小鍋でオーツミルクを温めます。(スウェーデン発のOatly社のものが北欧テイストで相性抜群!日本のスーパーでも手に入りやすくなりました)
- 温めたオーツミルクをマグカップに注ぎます。
- シナモンの代わりに、市販のカルダモンパウダーをひと振り。もしあれば、お好みでハチミツやメープルシロップを少しだけ垂らして完成です。
日本のスーパーのスパイスコーナーにあるカルダモンパウダー(小瓶)で十分に現地の雰囲気が再現できます。
もしホール(さや)のカルダモンをお持ちなら、ミルクを温める時に数粒一緒に煮出すと、さらに本格的でノーブルな香りが楽しめます。
傷ついた記憶も、
叶わなかった約束も、
すべてはあなたが誰かを深く愛したという
美しい証です。
冷たい夜は温かいカルダモンラテを飲んで、
どうかご自身を優しく抱きしめてあげてくださいね。
あなたの明日が、
穏やかな笑顔で満たされますように。

Une image n’est rien sans vos mots.
― あなたの言葉のない image は、
あなたの言葉なしには何ものでもない
― Une image, sans vos mots,
c’est un plan sans voix.

poetry by ある光
a film by 一かけらの今
illustration by Velvet Easter Corp.
for those who still believe in love.
まだ愛を信じている、すべての人へ。
あなたの「恋」を、ぜひここに
誰かに話すほどではないけれど、
自分の中では忘れられない瞬間。
言葉にできないほど切なかった夜や、
今でも胸が温かくなる記憶。
あなたの心の中にある大切な『恋』の欠片を、
少しだけお裾分けしていただけませんか?
※お送りいただいたメッセージは、編集部にて大切に拝見いたします。
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