きっと毎日空は痛みを伴って
![きっと毎日空は痛みを伴って](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/800-5502715_800.jpg)
踏切
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踏切の甲高い音が
風にまたがってこの部屋に来た
急いで駆け抜けたいのに
足がすくむ
もう何本も電車を見送ったような
やるせなさが部屋を満たしていた
踏切の音と入れ替わるように
君のため息
セーター
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/2811961_1500-1024x681.jpg)
セーターの裾を引っ張る癖
君はちょっと嫌がっていたね
言いたいことを飲み込んで
綺麗な嘘と笑顔を用意しても
君はすぐに見破った
少し伸びてしまった
君のセーターに絡まる
秋を告げる風
枯葉が傷つけあう音
似紅
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/7902_800.jpg)
ほんの1ピクセルずれただけで
この絵は完成しないんだ
慎重に慎重に線を置いて
少しずつ少しずつ色を注ぐ
君の目の先
似紅が交わらずに重なっていく
滲みもせず
明日が見えないような夕焼け空を
君は描いた
midnight
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/1683162_1500-1024x683.jpg)
ただ二人いるだけで
分かり合えたらいいのにって
空の淵を見て
アンドロメダにそっと願った
午前2時
窓の隙間から見える
いくつかの光の下に
どれくらいの愛があるだろうか
そっと手を伸ばしても
触れられない光
整然と
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ところどころに空いた穴
繕うように
ポツリ、ポツリと言葉が漂う
ほんの一言で
心の底まで届いていた日々を
懐かしく思い出す
君は今、何を思ってる?
本棚に並ぶ
日に焼けた背表紙を眺めた
二人で少しずつ
埋めていった空間
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
chair
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古道具屋で見つけた
籐の椅子を
日の当たる場所に移動するのが
君のこだわりだった
ちょっとささくれても
大切に補修していた
お気に入りの場所
そっとそこにいて
全てを受け入れる
そんな風に私もなれたらよかった
髪結い
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/3697121_1500-1024x727.jpg)
結った髪をほどいては
またくくって
意味もなく何度も繰り返した
小さな部屋に
君の声とキャンドルが揺れる
吹けば消えてしまう
六等星のような光と声
この声に何度も心を撫でられたから
終わりを告げられても
なんだか心地よくて困る
髪を結い直して下を向く
変身
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/2715_800.jpg)
思い出は
いつになったら痛くなくなるの?
星でさえ
永遠ではいられないの?
そんなことを思いながら
朝焼けを1人歩いた
空はグラデーションに染まって
ひとつの色では
いられないみたいだった
朝になるのは簡単なことではないね
きっと毎日空は
痛みを伴って変身しているんだろう
落ち葉
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/2157_1500-1024x722.jpg)
くるぶしまで重なる落ち葉は
朝焼けのグラデーションみたい
交わらずに重なる絵具で
神様に秋の色を注がれた
分け入りながら
ひたすらに進んでいく
どこに辿り着いても
また笑えるように
今だけ泣きながら歩いた
new born
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/05/1384296_1500-1024x684.jpg)
生まれ変わったよ、
と教えてくれるように
朝日がまつ毛をめくった
君の絵の完成は見れなかった
君の椅子にもなれなかった
君の声をもっと聞いていたかった
まだあちこち痛いけど
息を吸い込んで
私はまた私をはじめ直すの
fin d’un début
ある始まりの終わり