いつでも離れられる2人
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夜に満たされた
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夜の気配がたちこめる
しっとりと静かに
手を絡めるようにして
街の上に
わたしたちの上に
充満していく
露に濡れる
草木の匂いを
胸いっぱいに吸い込んで
あなたと2人
夜に満たされた
1.3秒前
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「月が揺れてるね」
空気中に溶かすような
とっておきの優しさで
膝に乗せていたオスカー・ワイルド
壁にかかるビアズリー
どちらともなく
視線を泳がせる
「いま見える月の光は
1.3秒前のものなんだって」
わたしが好きなあなたの表情
過去の光を見ているときの
甘くて鋭いその表情
行き過ぎた熱
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弱々しく立つ
哀愁の向日葵
遠慮がちに開かれた葉は
行き過ぎた熱
まだ夜が残る時間帯に
ホットミルクを傾けて
朝焼けを見すぎたわたしたちは
夏の全てを知っていた
この想いを愛と呼ばせて
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半袖のシャツ
薄いスラックス
焼けるような陽射し
あなたの眼差し
汗が横頬をつたって
アスファルトに
しみていく
夏の息苦しさを
あなたとわかちあいたい
この想いを愛と呼ばせて
特別を胸にしまって
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風が再開を果たした
入道雲のむこうで
あなたと2人
笑い合いたい
誰もいない
迫る時間も何もない
ただ丸くて綺麗な瞳が
圧倒的な質量をもって
わたしを見つめてくれるだけ
楽しそうに眉を下げるあなたの
特別を胸にしまって
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
愛に救われる
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永遠にも感じる
星の命を
わたしの中に
閉じ込めてしまいたくなる
煌めきが眩しくて
誇り高さに嫉妬して
届かないことが
わかっているから
余計に枯渇する
「大丈夫だよ」
あなたの言葉と笑顔に
いつもほどかれて
「いつかは星も壊れるからね」
愛に救われる
箱庭みたいに
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あなたの指先が不意に
自然を整えるように
赤い葉を拾っていく
きれいだねって
ひとつ またひとつ
その仕草が完成されていたから
箱庭みたいに大切に
しまっておきたかった
赦されていたかった
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無邪気さをわざと纏った
子どものフリをしていた
変化するものを見つけて
流れるものを見つめた
永遠になれないこの時間に
赦されていたかった
走る電車に向かって
流れる星に向かって
いつも
いつでも
手を振っていた
降参の白旗をあげるようにして
わたしの手にはあなたの手が
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楊柳が風になびいて
いまにも連れていかれそう
太い幹には
日暮らしが
わたしの手には
あなたの手が
離れることを拒むように
強く優しく
とどまっている
いつでも離れられる2人
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命綱があるとして
あなたに繋がれているとして
それならわたしは
落ちてしまってもいいよ
溺れてしまってもいいよ
けれどそうじゃないから
いつでも離れられる2人だから
こんなに大切で
こんなに愛おしく
こんなに慎重なんだと思う
夕焼けがとても綺麗で
わたしたちの残り少ない
足場を削って笑ってる
fin d’un début
ある始まりの終わり