悲しみをたたえた世界
Life
いっぱいに広げた腕は
バランスをとり
長い脚で
軽やかに刻むステップ
正確なリズムは
耳に心地よく
ささいな仕草も
魅了のマジック
大胆なターンも
不意のジャンプも
変わらず正確に時を刻んで
引力を増すばかりのエッセンス
たった一つのアクロアイトを
燃やしながら踊り続ける
望んでなんていないのに
望んでなんていないのに
傷つけずにはいられない
ひとときの高揚がそそのかし
あっけなく誰かを真っ二つ
愛して欲しいと叫びながら
今日も誰かを真っ二つ
インタビュー
キラキラと
スパンコールが乱反射
うわずった音が
喝采のことば
まぶしくて
見えないその先は
セピアに染まった
静寂の水面
佇むのは
いつでもひとり
Burst
ビートは高らかに
輝きを刻んで
激しく強く
燃え上がっているのに
とどく熱はどこまでも優しく
甘く心地よい音が
隠してしまった
眩しいきらめきが
覆ってしまった
ブーケの棘が
刺さったままなのに
白いバラが
また棘を刺しているのに
静かに流れ落ちる痛みは
熱を伴って
膨れ上がったソレが
弾けて飛んだ
あのビートはもう聞こえない
罪と罰
繰り返す過ちに罰を
テミスにならって
目を塞いでしまおう
白を黒く塗りつぶす世界に
サヨナラを告げて
目を塞ぎ耳を閉じる
あなたのことも
閉じてしまえばよかったのに
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
あなたがくれたもの
あなたがくれたもの
あたたかな風に舞う
はかない花びら
一面の黄色に
ほころぶ微笑み
分厚いコートを脱いだ
リネンのワンピース
はじめて手に入れた
ティファニーのときめき
あなたがくれたもの
忘れ去った記憶の残像
寄せては返す
月下のさざなみ
縮まることのない
彼方の願い
悲しみをたたえた
世界
おいてけぼり
またね こんどはね
来年の今頃は 10年後にはね
星をつかんで並べて
鑑賞会
日射しの下のベルスーズ
未来予想図は
リアルなのに絵空事
そうやって
嘘つきなあなたは
わたしを置いて逃げた
羊飼いを飼うのは
白も黒も飲み込む
完全無欠体
近づきたくて手を伸ばせば
両手を広げて抱きしめる
孤独に慣れた
オオカミも手なずけ
孤独に飼われていたのは
どこの誰
やっぱりあなたには
シャモアよりサロメが似合う
それから
剥げたベビーピンク
秒針のない柱時計
グランデューカの欠片
完成しないパズル
あなたのいない
わたしの日常
次の巡り合わせ
どこへ行ってもいいよ
夕焼けに向かって
歩く通学路
気まぐれにみかんの生る
曲がり角
三毛が昼寝する細い路地裏
いそうな場所は
わかってるから
世界を渡ってもいいよ
どこまでも枝葉を伸ばす
深緑の世界樹
真っ白なユニコーンが集う
森の水辺
妖精が命を宿す
金と銀の揺りかご
見つけるまで旅はつづくから
お日様をたっぷり浴びた
ふかふかの毛布
少し甘過ぎる
インスタントココア
誰かが編んだ
長い長い毛糸のマフラーを手に
次は必ず
抱きしめて包むから
fin d’un début
ある始まりの終わり