この花が旅立つ頃
あたりまえのこと
はじまりは
こんなふうじゃなかった
ただあなたを
見ているだけでよかった
それだけで
満ち足りていた
それなのに
いつからだろう
あなたを
恋人にしたくなったのは
わたしだけを見て
わたしだけに触れて
わたしだけのものでいて
いくら伝えても
あなたは
そうしてくれない
空の向こうに
いるんだから
日曜日が月曜日に続くくらい
あたりまえのこと
ココロ
あなたはいつもそうだった
わたしのうれしい気持ち
わたしのかなしい気持ち
わたしが感じる
あらゆることを
いつだって
誰よりも早く
気づいてくれた
そして今
わたしの目の前に立ち
手を広げてくれる
…ねぇ、いつになったら
わたしの心の中にある
わたしのココロに
気づいてくれるの?
理由
何を見ているの?
誰を見ているの?
そうたずねると
あなたはすぐに
はぐらかす
でもほんとは
知ってるんだよ
あなたが誰を
見ているか
あなたが誰を
想っているか
だってわたしは
いつもあなたを見ているから
あなたがわたしに向ける
気持ちよりも深く
わたしはあなたを想っている
理由なんてない
早くこっちを向いてよ
この花
あぁ
なんでこんな気持ちに
なるんだろう
ねぇ
なんでこんな気持ちに
させたいの?
あなたもわたしの気持ちに
気づいているよね
見上げるほど高い背
切れ長の細い目
腕まくりをした時にのぞく
太い腕
どれもわたしの
友だちにはないところ
低い声で名前を呼ばれると
心臓がドクンと音を立てる
きっと
受け取ってもらえる日は来ない
この花が旅立つ頃には
わたしの気持ちも
見えなくなって
しまうのでしょうか
上の空
あなたがわたしを
愛おしいと思う時
あなたがわたしに
好きとささやく時
わたしはあなたを
好きじゃない
なぜだかわかる?
あなたはわたしを
愛おしいなんて
思っていない
あなたがわたしに
ささやく好きは
きっと上の空
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
ツグミ
群れを解き
一羽になった冬鳥のように
わたしは再び
あなたの場所へ
帰るのでしょうか
幾度となく
交わした約束
ちぎれないと信じて
疑わなかった二人
波も
風も
雲も
口をつぐんで
何も知らせてくれないけど
声も
目も
膝も
何も答えてくれないけど
味のしなくなった
炭酸みたいに
わたしの喉を
通り過ぎた
タイムマシン
2週間
あなたからの声
聞こえない
何十回目の
往復切符
思い描いたのは
片道切符
新しいテーブルと
新しい食器と
窓から見える
悲しいほどの青
タイムマシン
もしあるなら
伝えられたかもしれない
タイムマシン
あるわけない
もう終わりなのかな
左手
あなたを
困らせたくない
そんなこと
わかっているよ
でも
言わずにはいられなかったの
どうしようもないくらい
好きになってしまったから
止められない
わたしのボーダーライン
超えてしまったの
彼の左手に光るソレは
わたしの理性に
呼びかける力を
持ってはいなかった
本当の恋人
彼女の
その愛らしい姿は
わたしをひどく困惑させた
彼女はひどく痛がっていた
わたしの存在を知って
彼女の頬には涙の跡
彼の本当の恋人
彼女は知ってしまった
しまっておこうと
決めた思いが
ダムのようにあふれて
止まらなくなった
そうだよね
おどろいたよね
ごめんね
わたしはなんて
愚かだったのだろう
いつか
春の空のように
微笑んで
夏の青のように
答える
秋の日のように
あなたを
冬の白のように
包み込む
あれから何回
数えただろう
わからない
雨の日を
いつか
大好きになれますように
今日もまた
輝く波を見つめて
祈るの
fin d’un début
ある始まりの終わり