二十四時の恋人たち
Un deux
映画館
ラメ入りの空
ほんの少し距離があるまま
きみと歩いた夜
遠くに街の声
とあるワンシーンみたいな
ふたりぽっち
なのにどうして
悲しい気持ちなの?
世界から放り出されて
果ての淵に立つ
わたしだけは
ひとりぽっち
にがいドロップ
心と言葉がケンカして
くちびるからあまのじゃく
ふっ、と視線 そらされて
チクリ
巻き戻せない
ああ、いっそ
まるごと全部
わたしの本当を
いますぐあなたに
見せてしまいたい
なんて、うそ
わたしの本当なんて
わたしにもわからない
指の隙間
届かないのは
いつだって
その横顔で
鼻のカーブ
きらめく耳のうぶ毛
眠そうなまばたき
あと少し
気づかないで
気づいて
仲間にまぎれて
午後6時ごろ
きみの夜をください
アンダーカレント
ぽつんとした木曜日
からだの真ん中に
甘い痛み
ねぇ
この夜を越えられない
シーツにくるまって
海の底
早く知らせて
きみの名前
光る画面が
待ち遠しくて
息もできない
深く深く
沈んでしまうその前に
10000分の1
お気に入りのドラマ
図書館の背表紙
SNSの画面
ふいに
あなたと同じ名前
いやになってしまう
なんでかな
友だちとのおしゃべり
ひとりごはん
これからの準備
くるくると過ぎる毎日で
あなたのこと思わない瞬間
あるんだよ
たくさんたくさん
それなのに
あなたは残酷で
名前たったひとつで
わたしを壊す
いとも容易く
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
残されたものたち
ここにいて
いたよ
いなかったかも
いた
温度だけ
そう
残ってる
うん
あたたかくて
でも
さみしい
ごめん
手のひら
ほら
触れてみる
ね
いないのに
いるように
触れるだけ
声と息
覚えてる
耳の奥
離れない
記憶なんてものがあるから
苦しいのだ
ベター・ハーフ
魂の片割れ探し
なんでかな
うまくいかない
きみのぽっかり開いた穴
欠けた部分
愛おしくなるくらい
わたしにぴったり
完璧なわたしたち
なれるはずなのに
それなのに
神様はいじわる
人間を孤独な生き物に
生み落とした
スイッチ
隣にこないで
泣きそうになる
とくべつな響き
この世にはたくさんの言葉があって
けれども
あなたへの思いを表す
正確なものが見つからない
使い古されていない
私だけのとくべつな響き
まだ足りない
好きとか愛してるなんて
誰かが作った言葉でしょう?
こんなにも複雑で尊い感情
そんなものに
閉じ込めてしまわないで
いつかきっと
伝えるときがきたら
そのときはきっと
ヌーヴェルヴァーグ
ひんやりとした朝の空気
鼻先の冷たさを感じながら
ざくざくと前へ歩く
粉々になった宝石たち
まつ毛からおちて胸元を濡らす
新しいわたしにならなくちゃ
勇敢で
美しい
あなたのいない世界でも
立ち止まらずに
fin d’un début
ある始まりの終わり