強く握った手、その「好きだよ」が好き
5分でもいい
満たされたような
笑顔が見たくて
大きな手を
繋いでほしくて
体温を通じて
安心を分けてあげたくて
会いに行こうと思った
時間は短くていい
たった5分でもいい
あの優しくて無骨な手のひらで
髪をくしゃくしゃと
撫でてもらいに行こう
どこへでも連れて行ってほしい
少し早起きして
肌寒さを忘れるように
あなたの住む隣町まで
息を切らして
空のご機嫌をうかがいながら
深呼吸を繰り返す
あなたに会いに行く
たったそれだけのことなのに
なんてしあわせな15分なんだろう
あなたがコーヒーを買いに行ってる
朝日が昇ろうとしてる
どこへでも連れて行ってほしい
いつのまにか
いつのまにか分かる
優しいあなたと軟弱な私は
同じところで喜んで
同じところで悲しんで
本当によく似てるということ
心地いい距離感も
耳に入れたい声色も
ほとんど一緒
つまりぴったりだということ
魂の片割れとして
私を見つけてくれてありがとう
確かな感覚
文字で書くあなたの名前も
音になったあなたの名前も
とても美しいと思う
これは愛なんかじゃなくて
神様からもらった感受性みたいな
そういう遠い
でも確かな感覚で
強くそう思うよ
強く握った想い
橙に染まる世界の中で
浮かび上がるバス停
ちぐはぐな美しさに
なにも言えなくなって
隣にいるあなたを
そうっと見上げた帰り道
地平線に飲み込まれていく太陽も
気づいたら繋いでいた左手も
本当はまだ引き止めたい
強く握った想いには
気づいてくれただろうか
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
この雨に2人きり
サーサーと鳴る霧雨
白んだ景色を見て
あなたは目を細めた
いつもの街が
カーテンみたいに揺れている
うれしかった
この雨に2人きり
閉じ込められているみたいで
世界のはしっこ
ぼんやりと
境界線が曖昧になっていく時間
2人して目をこすって
「ねむいね」って笑いあって
遠くの喧騒を聞いている
なんとなく
世界のはしっこにいるみたいで
お互い顔を見合わせて
くすくすと
隠れるように笑った
あなたの存在
静かに生きている
あなたが
本当に静かに
願望を言った
一緒に幸せになろうね
きつく握られた手を
祈るように握り返して
あなたの存在だけで
満たされていることを
ただ伝えたかった
贅沢な悩み
冬にはもうあなたがいた
年が明けても隣にいたし
桜が咲いてもここにいる
私1人だった頃の日常を
もう思い出せなくて
いくばくかの不安だなんて
贅沢な悩み
笑っちゃうくらい
弱くなったよね
「好きだよ」が好き
馬鹿げた会話を
するのもいいよね
おかしいくらい
笑ってもいいよね
なんだそれって
少し意地悪に言うあなたが
同じような口調で
「好きだよ」って言うから
私はその「好きだよ」が好き
fin d’un début
ある始まりの終わり