北風のファンファーレ
ゆらゆら
あなたはいつも
ゆらゆら
掴みどころがない
だから
わたしはいつも
追いかける
近づけば
するりとかわされ
青い光の中を
行ったり来たり
でもいつの間にか
目の前にいる
あなたが愛しい
ドーナツ
窓の外は
曇り空
午後の予定は
何もない
テレビでは
雨の予報
カタツムリみたいに
ベッドに沈んだ
こんな日は
ついあなたに甘えたくなって
声が聞きたくなる
そんな気持ちを
ドーナツと一緒に
ほおばるの
待ち合わせ
新しいワンピースに
ロングカーディガン
イチジクのような
ボルドーブラウンのリップ
波打ち際の
バス停は
わたしの特等席
わたしの宝モノ
もう少し
もう少し
手を振りながら
あなたがやって来るまで
蛍光灯
遠くからでもわかる
あなたは
昼白色の蛍光灯
夜に浮かぶ街
人混みの中でも
オレンジが燃える
あなたの横顔
あなたの指が
輝いている
あなたは
はにかむように笑う
私の隣で
揺らめいている
レモネード
シロップと砂糖
レモンの果汁
あなたとのデートは
いつも
甘くて酸っぱい
レモネードみたい
顔をしかめるほど
酸っぱいレモンでも
唇が溶けるほど
甘い砂糖を加えたら
甘酸っぱくて
切なくなるの
いつものように
あなたがわたしを
呼ぶ声が聞こえる
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
あなたを想う
起きているのか
眠っているのか
わからなくなる
曖昧な現実
夢を見ているような
ファジーな感覚
昨日見た青空も
今日降った夕方の雨も
あなたといれば
どうでもよくなる
まどろみの中で
あなたを想う
冷たい色
やさしくて
あたたかな
瑠璃色の帽子
「似合うね」
あなたが言ってくれた
あの日
響き渡った
ファンファーレは
もう聞こえない
気づけばあなたは
この空の向こう
この海の向こう
消えてしまった
瑠璃色の帽子は
温度を失って
冷たい色に変わった
2辺の中で
あなたの隣にいるために
ぜんぶを捧げた
あなたの隣にいるために
いちぶを捧げた
何かが多すぎて
何かが足りなくて
500ピースの
ジグソーパズル
もう二度と
組み立てることはできない
2辺の中でもがいてる
正しい答えがわからない
正しい答えを探すほど
涙が溢れてくるばかり
北風と太陽
北風のように出会い
太陽のように別れた
突風のように連れ去られ
春日のように静かで
明日からの地図は
まだ白紙のまま
ここからどこへ
進めばいいの
どこまでも
吹き付ける風
どこまでも
消えない光
夜に隠れる道すじを
ひっそりと
地図に描いた
あなたはもういないのに
陽光と生活
ヒバリの声で目覚めた
わたしはまた
カーテンを開ける
窓の外を見る
起き上がって
朝食をとる
コーヒーを飲む
散歩をする
丁寧に
一歩ずつ
秒針の進む方向へ
日々をつなげる
あなたは今も
微笑んでるかな
わたしは南風に乗って
どこへでも行ける
そんな気がした
fin d’un début
ある始まりの終わり