レモンと氷砂糖の休日
うっかり
いつのまにか
わたしの恋人は
遠くの街に
行くそうよ
それとはなしに
ふいに
寄りかかっただけの
恋だから
ビターキャラメルの
くしゃっとした
包み紙を
せいぜい
のばすの
どうやら
うっかり
愛してしまったようです
いつのまにか
好きな時間
パンケーキと
ホットケーキの違い
わたしの好きな話
ふくらまないね
あなたは
冗談ばかり
だから
デニム色の
ランチョンマットを
ならべて
一本しかない
バターナイフを
交互に使うの
バターたっぷり
先に使ってね
わたしたちの
好きな時間
ケトルの終わりの
音がした
ここからの距離
遠くないよ
あなたの口ぐせに
いそいで手を
のばして
たしかめるの
ここからの距離
恋が顔を
のぞかせたら
あなたとの距離
まるで足りないよ
どうか
まだ来ないでね
凍える手を
すり合わせたのは
永遠の願い
平気なふり
夜がきたみたい
じっと見つめるの
あなたの靴
夕日がまぶしい
ウソをついた
じっと見つめるの
あなたの
お気に入りの靴
だって
想像できるでしょ
そんな顔しないで
きっとあなたは
平気なふり
カレンダー
もしもこの世界を
ふたつの形で
表すなら
きっと
マルとバツ
わたしの救いは
カレンダーに
書き留められた
ひとつしかない
マルで
マルの次は
バツしかないのね
こんな
明確なマーク
誰が
思いついたのかしら
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
灯火
濡れた手で灯すの
淡いキャンドル
あなたの温もりを
知らなければ
凍えることさえ
なかったのに
こんなにも冷たくて
壊れやすいものだなんて
夜の静けさに
おぼれてしまったの
あなたの温もりを
知ってから
灯火のような
星空
声の温度
やさしい風が吹いた
気のせいでしょうか
切りたての前髪を
気にしてたの
あなたの声が
耳に触れた気がした
目じりのしわを
手の硬さを
声の温度を
やさしい風が吹いた
わたしは忘れっぽいのに
気のせいでしょうか
holiday
たぶん
「そばにいたい」
コットンの
トートバッグから
本を取り出して
ぴったりの言葉を
見つけたわ
わたしの探しものは
レモネードの香り
消え入りそう
どうかあなたも
このholidayに
気づきますように
強がり
いつもの帰り道を
少し遠回り
あなたが
いないんじゃない
わたしがあなたの
そばにいないだけ
そんなふうに
考えてみたの
窓辺に置いた
モンステラに
日がさして
まぶしい朝日で
目が覚めたの
こんな日に限って
あなたがそばに
いないなんて
花言葉
あまりに
咲きこぼれる
ため息に
花言葉を
つけることにした
「乙女の感傷」
「恋煩い」
「切望」
忘れていたことが
たったひとつだけある
「未来への望み」
少し
笑みがこぼれた
fin d’un début
ある始まりの終わり