あなたの体温
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逆光
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ひだまりの中で
窓辺に座る
あなたと出会った
あなたはまつげを伏せ
文庫本にため息
まるで時間が
止まったみたいで
ページをめくる指が
見えなくなる
逆光の中で
わたしは息を止めたの
夕焼けの二人
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放課後の教室
いつのまにか
うたたねの中
校庭から聞こえる
陸上部の掛け声
ふと目を開くと
すべてが橙色に染まって
夢の続きみたい
まどろみの中で感じる
あなたの気配
まだこうしていたくて
気づかれないように
また目をつむったの
どこまでも遠く
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ここではないどこかへ
わたしを連れ去って
私の手をにぎって
どこまでも遠く
幾千連なる北国の山々
コバルトブルーの暖かな海
見知らぬ遠国の街
決して離さないと
約束してくれたら
どこまでも遠く
ここではないどこかへ
二人を隔てるもの
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/01/jilbert-ebrahimi-pVEcNabAg9o-unsplash.jpg)
ガラスが割れて
地上に光が降るように
わたしの心も
地上に堕ちてしまえばいい
窓の外に広がる
あなたがわたしにしてくれたこと
部屋の中でうずくまる
わたしがあなたにしてあげたこと
ガラスが割れて
ひとつに融け合えたら
どんなにいいか
ストーン
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パールのネイルチップ
オーロラのように
揺れながら
桜の花弁のように
淡く柔らかく
曖昧で不確かな
あなたへの気持ちに似ている
気づいてほしいなんて
思わないけど
わたしに少しの勇気が
あるのなら
スワロフスキーの
大粒のストーン
デコレーションして
両手を空にかざしたい
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
あなたの体温
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吐く息が凍る朝の舗道で
かじかんだ私の手を
あなたは握ってくれる
いたずらっぽい笑みを湛えて
やさしい私のお日さま
胸の片隅
いつも佇んでいるの
大きな温かい手で
ぎゅっと握られた
あなたの体温
蝶
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ゆらりゆらり
羽ばたく蝶
あなたの心は
かぐわしい花を探して
浮遊する
ふわりふわり
光と戯れながら
花から花へ
自由で気まぐれで
おいしい蜜を吸うあなた
どうか
わたしの心で
羽を休めてくれたら
花びら
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/01/annie-spratt-bxt-tWSF-Ko-unsplash.jpg)
誰のものにもならないで
まだ側にいられるでしょ
友達のフリをしていれば
きっとあの子は気づかないでしょ
ワガママな子供みたいでも
かぼそく揺れた淡い花びら
うつむいた先に
シクラメン
面倒なことは言わないから
側にいさせてほしいの
氷雨
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側にいるのに
こんなにも遠い
氷雨を掴む手のひらには
かすかな涙の一滴
私は迷い
不安になるの
いっそあなたを
霧に隠してしまえたら
そんなことを思うほど
私の心は凍りつく
雪の女王になったみたいね
鏡の破片を
どうか溶かして
あなたはもう
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/01/3808131_1500-1024x683.jpg)
4℃のペアリングも
一緒に行った映画の半券も
ふざけて渡された
コンビニのレシートも
全部あなたがくれたから
うれしかった
あなたがくれるものなら
何だってよかった
一つひとつが大切で
一つひとつが忘れられない
ベッドの脇で微笑んでいる
あなたがくれたもの
あなたはもう
忘れているかもしれないけれど
fin d’un début
ある始まりの終わり