あなたを過去にしたい
頬を伝う
目に映ったあなたの背中
指先を胸の前で絡める
少し苦いレモンの香り
頬を伝って
しょっぱい味が口の中に
西日が照らした二人の背中
雨に濡れたコンクリート
ビニール傘を捨てて
目を閉じた
さよならさえも
雨上がりの虹
濡れたあじさいを見る通学路
星の粒のように光る露
飛び交う声を遠くに捨てる
羨望の胸の痛み
おはようが言えないの
あなたの隣
さよならも言えなかった
ポラリス
明日また会えるかな
カプチーノを飲んで
こぐま座を空に見つける
あなたの1番に
なりたかったんだ
流れ星に
3回唱えたお願いごと
わたしはきっと
ポラリスにしかなれない
見えなくなった一等星
ミルクの白が消えていく
夜空はこんなに
寒かったのね
消せない恋
恋をしたから
てるてる坊主を
ぶら下げた窓辺
晴れる予報は流れない
恋占いは最下位で
ラッキーアイテムは
消しゴムだって
ノートの端の落書き
指でなぞったら
黒が滲んだ
破り捨ててゴミ箱へ
燃やすことは
出来るかもしれない
消せない恋を
したはずだから
告白
チャイムが鳴って
廊下から人が消えていく
見えたあなたの笑顔
わたしより背の低い
女の子と一緒
同じ目線で話してた
わたしと同じなのは
制服くらい
あなたの恋は実りそう
わたしの恋は摘み取られて
英語の授業
自分のノートの端に
告白した
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
苦い後悔
あなたの行く道は
どこだろう
地元に残ったわたしとは
はなればなれ
視線の先に将来の夢
甘かったのは
指先に残ったクリーム
あなただけでよかったのに
少しだけ苦い後悔
平行線でミルクを溶かす
ちらちら舞う風花
あなたは光をさえぎって
彼女の曲線と重なる
わたしの恋も
雪解けを迎えた
わたしの中に
夢のような話
あなたと歩く銀杏並木
思い出した海岸沿い
祭囃子を聞いて
花火を見た
記憶の中
雨に打たれる
目から溢れる熱い雫
水たまりの上をわざと歩いた
ひとりきりの通学路
冷たい手の平に
滲むメッセージ
伝わらないのは
伝えないから
「好きだよ」
わたしの中に閉じ込めた
温もりの名残
別れの季節
新しい出会い
卒業式は桜が爛漫で
卒業証書を胸に抱える
友達と記念写真
あなたの姿は
遠く映り込んだだけ
彼女と手を繋ぐあなた
同じ大学だって噂を聞いた
「また遊ぼうね」って
そんな気分は
きっと忘れちゃう
わたしの心は教室に残って
あなたの温もりの
名残を探すんだ
あなたと彼女
白い部屋
ひとりきりで
床に寝転ぶ
山積みのダンボール
窓の外は快晴
開けた窓から
春風が吹き抜けて
あの日の桜が舞い込んだ
引越し業者が来て
わたしの一人暮らしの
準備が進む
あなたとの写真
1枚だけ
クラス写真で隣同士の
あなたと彼女
わたしは真ん中
友達とピースサインで笑ってた
空と深海
あなたを過去にしたい
目を伏せて
お願いするの
言えなかった
片思い
まるで空と深海
昇っていくあなた
沈んでいくわたし
太陽とだけ
戯れるあなただから
海の底
見ないフリをした
水の冷たさには
慣れたけど
あなたとの写真
アルバムにしまえない
あなたを過去にしたい
いつかあの空に
届くのかな
fin d’un début
ある始まりの終わり