午前三時のフィルム・ノワール
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歩幅
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掴むあてを
失った手は
行き場を失くして
彷徨った
貴方との距離は10cm
夕日が二人に
影を落とし
小さく揺れた
別れ道に
背を向けるように
今日も回り道をする
深海
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二十二時
ヘッドホンで
世界を遮断して
雑多なネオン街に
足を踏み入れる
目に痛い
無機質な光は
他人行儀で
かえって心地良い
夜の海に
身を委ねながら
溺れていく
こんな時にも
貴方の顔が
ちらつくなんて
——この想いごと
夜に消えればいいのに
戯言
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境内には
二人きりの世界
煌びやかな提灯との
コントラスト
幾分か粧し込んだ
横顔は
どうしようもなく
美しくて
また惚れ込んでしまう
「貴方の好きな人に
なれたらいいのに」
小さな呟きは
神さまの耳に
入っただろうか
逃避行
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新宿駅で見つけた
鎌倉行きの文字
まばらに車内に乗った人は
これから何処かに
帰るのだろうか
気づけば潮の
匂いの中に
佇んでいた
道しるべは
遠い三日月
帰る場所を失った鳥は
果てない空の下で
震えている
二十三時四十五分
貴方への遺言
女心
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「貴方を独り占めしたい」
なんて
可愛くない独占欲
これでも必死なのと言えば
貴方はどんな反応をするかしら
醜いあたしを
深く沈め
貴方にそっと
口づけをした
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
午前三時
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灯りのない部屋
壊れた暖房は
少しも身体を
あたためてはくれない
冷たいフローリングは
私の体温を徐々に
奪っていく
外で強く吹く風が
窓を鳴らした
心に隙間風が吹いた
聖夜
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貴方から貰った
白いマフラー
ちらつく粉雪が
私の頬をひと撫でした
「貴方がいたら
もう少し温かかったのに」
らしくもないと思いながら
けれど
これからの時間に期待して
今日は
ホワイトクリスマス
誘惑
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甘ったるいチョコレート
ラム酒の甘美な香り
貴方を陶酔させるには
十分すぎるけれど
私の手元には
不恰好なボンボンショコラ
デパートで見た
綺麗なものとは違う
それでも精一杯の
想いを込めて
赤色のリボンで
蓋をした
One Last Chance
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あなたが
私から旅立つ朝
青く澄んだ空
涙に染まる
あなたと歩く
最後の道
微笑む顔が
見えなくなっていく
気づかれないように
さよならをして——
さよならしたくない
アルバム
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真剣に
何かを
見据えている
横顔
花が咲いたように
笑う顔
どれも私の
お気に入り
カシャリという音
昔は
重いと思っていたカメラ
淡い恋と
フィルム
fin d’un début
ある始まりの終わり