サヨナラの前に、未来の話をしよう
ドラマチックな恋じゃなくても
ちょっと先の未来は
とくに確かめる必要なんてなく
サヨナラの予感を大いに含んでた
利口な選択じゃない
そういわれても
こうなるのが自然だったんだ
激しく燃え上がる
そんなドラマチックな
ものじゃないけど
きっと運命
磁石が引かれあうこと
引力に逆らえないこと
すべてはきっと同じ理
お似合い
穏やかでのんびり
口数は少なめだけど
自己主張はしっかり
並ぶ様もしっくり
みんなは口をそろえて言う
お似合いの二人だと
それでも確かに別れは訪れる
少女時代は過ぎた
宝物や抱えた荷物はそれなり
両手いっぱいに抱えながら
指先で君の服を握った
君からのプレゼントも増えて
両手はもう限界近く
あれもこれも欲しいけれど
それは欲張りというもの
きっと
何かをあきらめなければならない
幸福の名のチケットを
ここで使いきることはできない
夏の一幕
冷たい炭酸を流し込んだら
日射しの中へと競うように
波打ち際にはしゃいで
焼けた砂浜でボールを追う
楽しい時間はあっという間
無邪気に楽しめるだけの時間は
もうおしまい
季節の終わりを予感させる風に
お別れの準備をはじめなくちゃ
その日のために
読書する横で寝ころぶ
無防備な寝顔
ジェラートをお気に入りにこぼし
情けなく寄った眉根
何気ない瞬間を
丁寧に切り取って
増やしていく
何年経っても忘れないように
記憶が薄れないように
寂しさで困らせないように
離れても生きていけるように
君はどこかあきれ顔だけれど
想いが強いほど
覚悟を決めるには
時間が必要なんだよ
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
君とのLIVE MUSIC
2人の趣味が
はじめてピッタリ重なった
お気に入り
飽きてしまうほど何度も
何度も聴いても
飽きることなんて全然なくて
片方ずつのイヤフォン
真夜中のハイウェイ
真冬の海にも流していたっけ
ウィンドウを全開にして
寒さに震えながら
馬鹿みたいに大声で熱唱
信号待ちでは恥ずかしくて
仕方なかったけど
どっちが大きな声を出せるか
賭けたりして
そういえば
最後の賭けは
どっちが勝ったのかな
冬の訪れ
予報通りにちらつく雪が
季節がまた深まったことを教える
君に選んでもらった
ロイヤルブルーのコートは
やっと叶えてくれた唯一のおそろい
白のジョンストンズがよく映える
このまま2人手をつないで
白の世界へ溶け込んで
永遠に春の来ない
どこか遠くへ
まだ帰りたくないの
帰り道
別れ際
また数時間後に逢える日でも
離れることはどうしようもなく寂しい
5分後に電話しても
何時間も
メッセージすることになっても
わがままを言えるようになって
あと少しを繰り返したのは
君を困らせるためじゃない
怒らせたり
喧嘩になったりするようになっても
離れ際の寂しさはどうにもならなくて
近頃は怒ることもなくて
しょうがないなぁと延長宣言
リミットが近づいたことを
君の態度が
否応なしに教えてくれる
ほどけてもいない靴紐を
直す振りで下手な悪あがき
穏やかに目を細める君の
伸ばした手をそっと握った
遠距離の掟
遠く離れても同じ空の下
優しさをにじませる言葉が
なぐさめにもならない
遠く離れれば
見える星の名も空の色も
何光年先のだって違った角度
繋がっていても
眺める空は決して同じじゃない
離れるとは
そういうこと
サヨナラの前に、未来の話をしよう
慈しむように時を重ねても
近づく瞬間を
遠ざけることはできない
積み重なる悲しみと不安に
これ以上は抱えられないと
目を背け続けたわたし
痛みを伴う争いを
いつも無意識に避けてきた君
泣くのはいつだってできる
待ち受ける痛みや苦しさは
何をどうしても軽くなんてできない
だから
未来の話をしようよ
その先に光を見出そうよ
再び交差できると希望を抱こうよ
二度と運命は重ならなくても
君とわたし
過ごした日々は正しかったと
確かに言えるように
“今”に押しつぶされないように
未来の話をしようよ
fin d’un début
ある始まりの終わり