難破船|恋愛詩集 by 笠原メイ
耳
ブルーハーツを聞いた耳に
ボブディランを聞いた耳に
優しい魔法をささやいてくれた
はちみつのように甘い声で
冬を忘れていった彼女と
夏を思い出した僕
愛ってこんな形をしてたんだね
なんだか切ないけれど
線香花火の残り香がついた服で
どこまでも走ってゆけるよ
ただの言葉
君が今まで話したことが
全て嘘でも構わないよ
二度と笑えなくても
君は可愛い
傷ついたこと、悲しかったこと
頑張ったこと、叶わなかったこと
何も喋らなくていい
寂しさに任せて
体温を交換しよう
血液を交換しよう
星空に溶ける声
愛してるなんて言うな
そんな言葉ただの言葉なのさ
私の夢
アンドロメダの指輪を交換して
虹色の花が咲き乱れる丘
甘いカフェオレみたいなキスをした
私は目を閉じなかった
王子様のさらさらした前髪の隙間に
カシオペアが瞬いていた
触れることのできない場所が
よりいっそう愛おしいわ
これが夢でも構わないというのが
本当の夢なんだって思うの
透明の花
悲しいと思ったことなんて
一度もないわよって彼女は笑う
だからもうあんまりくよくよしないでねって
路地裏の猫のように姿を消した
夜中に電話が鳴ることもなくなった
でも彼女が吸ってた煙草の香りだけ
僕の周りに漂っている
まるで透明の花のように
優しさって嘘をつくことなのかも
賢者
世界で一人しかいない君と
世界で一人しかいない僕が出会い
そして恋に落ちた
隕石が降ってくるように
抱きついて求め合ったミッド・サマー
魔法は使えなくても奇跡は起きた
ほんの一秒で人生は変わる
運命も神様も君の瞳の中にあったんだ
それに気づいただけ
僕は賢いと言えるだろう
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
難破船
夏の朝の海水くらいの
冷たさで僕を突き放した
彼女の微笑みは猫そのもの
錨をなくした僕は
それからずっと難破船のまま
焼肉を食べても砂の味
夜もうまく眠れない
でもいつまでも
くよくよしてはいられないし
携帯電話をゴミ箱に突っ込んだ
天国か来世でまた会おう
そんときはよろしく
例えるならば
ねぇ、私のこと、どのくらい好き?
今まで地上に降った雨の量くらい好きだよ
他には?
キングコングを一撃で倒せるくらい好きだよ
他には?
宝石で出来たメリーゴーランドくらい好きだよ
他には?
120分のカセットテープに全部
君の声を録音してほしいくらい好きだよ
さよならの味
一個の林檎を二人でかじった
あの海辺にもう希望はない
一本のキャンディを二人で溶かした
あの小麦色の丘にもう光はない
一枚のレコード盤を二人で踊った
あの四畳半にもう夢はない
一匹の猫を二人で撫でた
あの狭いベッドにもう愛はない
さよならの味
以外
消失してしまった
HERO
世界中の信号機が赤で止まっても
僕は君に会いに行くよ
エイリアンが襲撃してきても
UFOを奪って君と逃げよう
教会が全てゴミ箱でも
君は僕を信じればいいんだよ
太陽が落っこちてきても
僕がホームランを打ち返してあげる
神様に差別されても
君と僕はいつまでも笑っていよう
ドレミやファソラがシドする夜に
ドの上で 飛びはねて
レの上で 手をにぎる
ミの上で 見つめあい
ファの上で 抱きしめる
ソの上で 踊ろう
ラの上で 指輪して
シの上で くちづけ
ドの上で 結婚しよう!
fin d’un début
ある始まりの終わり
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