頬を伝うノクターン
色彩のダンス
揺れる電車
隣にあなた
眠たげな顔で
目を閉じたのは
少しでもその肩
触れたかったから
薄目を開けると
逃げ際の夕日
息を飲むような
色彩のダンス
ただ眺めていた
うつむくほど
うららかな春の日
恋する少女
遠回りの帰り道
頬をくすぐる
ボブの毛先
落ち着かなくて指あそび
わたしずっと上の空
話したいこと
ただ一つなのに
触れられそうで
触れられない距離
実りそうで
実らない思い
何だか似ている
なんてね
わたしまるで
恋する少女
水槽の魚
色とりどりの
水槽の魚と
優しい青色
無機質な光
待ちわびた冬の日
始まりは
終わりへの序曲
時間よ止まれ
あなたに見つめられて
魚は跳ねる
羨ましいな
ぽつりこぼした
あなた今日も
聞こえないふり
大人ごっこ
最後の思い出
せめてかわいいわたしで
背伸びした靴擦れ
褒めてもらった爪の先
遠くなる背中
現実を疑ったまま
泣けなかったことも
あの日の続きも
あなたは知らない
でも
安心してね
わたしきっと
あなたが知ってるよりも
ちゃんと大人だから
湯気
ココアに隠した
言えない気持ちは
白い湯気
混じって消えた
ふらりふらりと
行ったり来たり
あなたに届けようとしては
わたしの元へ帰ってくる
いつの間にか
抱えきれないほどに
膨れ上がったそれは
いつかあなたに届くでしょうか
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
秘密
賑わいの街
遠くから見えた
わたし探す横顔
些細な喜び
焼き付けるよう
しばらく見ていた
揺れるイヤリング
付けたてのチーク
鏡の中
今日のわたし
きのうより
少しかわいい
秘密の高鳴り
あなたにはまだ届かない
いつかはきっと
いつかのまま
海の底
ひとりぼっちの真夜中は
まるで海の底みたい
低い温度
息苦しくて
頼りないくらい
弱い光
誰にも聞こえないように
静かに泡を吐き出して
ただひっそり
あなたの幸せを
願い続けるの
たとえあなたの隣に
わたしがいなくても
欠けた月
三日月が好きなのは
諦めきれないわたしと
何だか似ているから
伏し目がち
頼りない光
完璧を夢見てる
あなたの優しさで
足りないわたしを補うの
はみ出した手紙と
物憂げなわたし
あなたに選ばれたくて
今日も待ってる
夢
ふたり歩く夜明け前
回る景色は水彩画
息を飲むほど美しく
沈黙の音色さえ
耳をすませば聴こえそう
ねえ
実はね
わたし
あなたのこと
言いかけた後
ぱちんと音を立てるように
目が覚めた
ベッドの上で
わたしはひとり
午前六時
あなたの色は
わたしを照らす
夜の灯台みたい
気だるさと偏頭痛
今もまだ
体の一部のよう
何年経ったら
あなたの色を失うんだろう
ぼんやり窓を開けると
乳白色の空と
ぬるい紅茶の琥珀色
午前六時のコントラスト
風に吹かれたら
聞こえた気がした
「どうか忘れないで」
あれは
わたしの声だったのかな
いいえ、たぶん、きっと
夜明けに向かう
渡り鳥だわ
fin d’un début
ある始まりの終わり