この花は色褪せない
深海
真っ暗で
何も見えなくても
わたしは怯えたりしない
うまく息が
できなくても
わたしは怯えたりしない
好きなところへ
行けなくても
わたしは怯えたりしない
なぜって
漂って、漂って、漂って
流されていくのは
慣れっこだから
だけどもし
あなたが傍にいてくれたなら
潮の流れに身を委ねて
楽しいワルツが踊れるね
今はもう
後ろを振り返っても
わたしの尾びれが
ぽつりたゆたうだけなのに
RGB
始まりは赤
緑よりも
情熱的だけど
冬の気配に身がすくむ
花の咲かない
クチナシ
香りもせずに
退屈なだけ
幼い子ども
駆け回るけど
わたしの思いは停止する
あなたを見たとき
眩い青が重なり合って
ああ、なぜ
世界はこんなにも
たくさんの色でできているの
A
誰にも媚びない
ルージュを買った
あなたを探して
淡い香りをまとった
受容体から
あなたに届くように
唇に色を乗せた
わたしの声が
少しでも可愛く響くように
変わったねと驚かれた
派手な色だねと指さされた
知らないの?
恋をしたら誰だって
悪い子になるの
雪
寒空の下
橋の下で泣く少女
灯りの中に夢を見ながら
どれほど心細かっただろう
手を取ってくれたら
よかったのに
抱きしめてくれたら
よかったのに
あなたの胸の熱さと
わたしの胸の熱さが
吐息になって
雪を溶かす
雪は流れて
後には冷たい
アスファルトだけが残るの
舞台袖
同じ物語の中に
いるはずなのに
場面が違うから
視線も交わせない
スポットライトに
照らされた横顔
ここから見られるのは
わたしの特権
そのはずなのに
観客たちが羨ましい
通い合うのは
あなたと彼らで
わたしはただ
唇を噛んで
恋焦がれるだけ
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
キャラバン
喉が渇いて仕方がない
ネオンの光はまるで
灼熱の太陽
熱い指先を絡ませた
わたしたちは
同じ砂漠にいる
千夜一夜のように
いつまでも終わらない
あなたが話して
わたしが聞く
わたしが話して
あなたが聞く
そろそろ
オアシスを目指しましょう
お喋りのせいで
喉が渇いて仕方がないの
スニーカー
あなたの好きな
歌を歌った
声が光になる
そんな気がした
大切なのは
怖くても
最後まで歌うこと
夢を見ること
背筋を伸ばして
胸を張ること
ピンヒールじゃだめ
大人っぽくて素敵だけど
力が入らないから
スニーカーを買おう
あなたの好きな
歌を歌うために
薔薇
花束を抱えて
あなたがやってきた
心の準備ができなくて
無防備な肺が侵される
ごめんねと笑う
下がった目尻が心を撫でる
幾重にも重なり合った
赤い花びらは
こぼすことなく
わたしの涙を吸い込んだ
黎明
あなたを想うのは
いつだって
夜の腕の中
嫌いじゃなかった
涙に濡れた頬を
覆い隠してくれるから
東の端から
朝がわたしを暴きに来る
好きって
今なら言える
だって知らないでしょう
わたしはひとりじゃない
潮風
大海原
パノラマビュー
この場所はきっと
どこにでもつながっている
凪いでいたってつまらない
荒れていたら恐ろしい
でも二人なら
潮風のリズムに体を重ねて
楽しいダンスができるわ
いつかたどり着ける日まで
どうか
この手を離さないで
fin d’un début
ある始まりの終わり