わたしの好きな音楽
声と沈む
あなたに言われた
何気ない言葉
それは甘いからかい
冷たい称賛
苦い共感
一つ一つが降ってくる
記憶の奥底から漏れ出して
優しい子守唄のように
わたしを
世界を
包みこむ
まろやかな夜に
あなたの声と沈む
ノクターン
プラタナスが並ぶ街道
撫でるような音に
耳を傾けて
あなたが
見えた気がした
今日もまた聞いている
名前も知らないけど
あなたがこの曲を好きなこと
知っている
3つのノクターン
飛び跳ねる音符を
そっと捕まえたい
雨になりたい
雨になりたい
軽やかに
光り輝いて
しなやかに
潤いをたたえて
凛としつつも
無邪気さを忘れず
ただまっすぐまっすぐ
あなたに向かって
落ちていきたい
どうか受け止めて
たった一粒でいいから
慈悲
黒板に並ぶ文字
厳粛に響く言葉
厚い書籍の山
どれだけ吸収しても
人の感情には
追いつけない
大事な瞬間にはいつも
心臓が高鳴って
指が震えて
知識なんて無意味になる
慈悲を前にしたように
日常
柔らかなタックワンピース
裾が風に広がる
ふわふわと
軽佻浮薄
あなたに会うかもしれない
それだけの理由で選んだ
今日もまた
オリーブ色の日常
もう少し歩いてみる
偶然とのかけひきは
いつもうまくいかないけど
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
溝
音の鳴り方
光り方
空気の震わせ方
何もかも違う
あなたと他の人では
たった一節のメロディで
わかってしまう
日々の違和
降りかかるほどに
あなたとの溝を
埋めに行かせて
宝石
目が合った
気がした
ううん、確かに
目が
合ったと思う
気だるい日差しの中
埃っぽい教室
落とした消しゴム
彼の手で運ばれて
モネの絵画のような
繊細な柔らかさで
手から手へ
息を忘れたそのとき
ふと
風が走った
指に触れないようにして
宝石を受け取った
意味
シンプルなボタン
リズムよく数えて
跳ねる指先が
教えてくれる
この恋の情緒
この恋の哀愁
耽美に描かれた白鳥も
野を蹴り
空を舞い
シェイクスピアの
詩の意味を探す
unchanging love
見つけられたら
一緒に行こう
鼓動
揺れるケヤキ
「ほうきを逆さまにしたみたい」って
一緒に笑ったことがあったね
変わらない日々と
変えられない思い
モラトリアムを脱することの
果てしない難しさ
あなたが誰を愛そうと
あなたが誰から愛されようと
ケヤキは揺れる
世界のすべてを無視して
わたしの鼓動を無視して
好きなのはあなた
わたしの好きな音楽を
あなたが初めて
聞いてくれた
オレンジに染まる放課後
遠い喧騒
あなたはノラ・ジョーンズの
CDを手にして
静かな質問を一つ
「何が好きなの」って
そんなの決まってる
わたしたちの間に
長く横たわった年月を
すべて踏み越えて
好きなのはあなた
伝えたいのはこれだけ
好きなのはあなた
fin d’un début
ある始まりの終わり