あなたはその大きな手で髪を撫でる
月の満ち欠け
わたしとあなた
風のはじまりと
風の終わりくらい
違う場所で息をしてきた
あなたの方が少し多く
月の満ち欠けを数えたよね
迷い込んでも
そっと救い出してくれる
優しい月の満ち欠けを
見えない青
同じ色が続く映画を
じっと見ていると
セピアに巻かれて
何か大切なことを
忘れているんじゃないかって
不安になるの
だけどあなたが隣にいるだけで
見えない青に飲み込まれても
何も聞こえなくても
ただ、今が大切なんだってわかる
空に生えた樹
小さな指で
空に生えた樹をつまむ
白昼夢の淵にいるみたい
少し冷めたミントティーに
昨日の会話を浮かべたら
また湯気がたちのぼった
ウェッジウッドの中で
何度もあなたの声を再生して
目を閉じる
心の輪郭を撫でるような
あなたの優しい声
デカルコマニー
好きな色だけじゃもったいない
似合う色だけでももったいない
時々あなたは
子供みたいに大胆になる
立ちすくむ私のことさえ
簡単にさらってしまう
たくさんの色に想いをこめて
デカルコマニーみたいに
2人の形を写し出すの
カイト
目がくらむブルーに
気ままなカイトを泳がせて
そのまま季節を越えるように
どこまでものぼっていった
声が届かない場所は
宇宙とどれくらい近いかな
突然の風に揺られても
ピンと張り直す糸の感触
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
日時計
いつからか
同じ太陽が朝を告げることを
知っていたけど
それは何歳の頃だったろう
日時計がめぐる
あなたの影はいつも
わたしを包むように寄り添っている
振り返りながら
歩幅を合わせながら
不安げなわたしのことを
じっと見つめながら
blue day
どんなに唇に力を入れても
こぼれてしまう涙がある
どんなに笑おうとしても
心に砂が溜まっていくような日
そんな日はたった1人
部屋に閉じこもって
あなたの顔を思い出す
笑顔もいいけど
何かを考えて1人の世界にいる
そんなあなたの横顔も好き
新緑の街
花は幻みたいに
すぐに新緑が街を塗り替える
あのむせかえるような
緑の香りの中を
2人で歩いて行く
同じ空気を吸っている
同じところで笑う
指の背と背が触れたら
それは愛しさの合図
かかと
わたしの心に雨が降りやすいこと
たまに冗談を信じてしまうところ
乾いた場所と譲れない場所があること
あなたはお見通しだった
わたしはまだまだ
あなたに届かずに
ぐっとかかとを上げている
それをなだめるように
あなたはその大きな手で髪を撫でる
レースフェーベル
意味のない秒針はなかった
全部あなたに繋がっていた
緑の街をくぐって
風の強い日も
笑えない日だって
隣を歩けますように
旅立ちの朝
未来がチラチラと光っている
fin d’un début
ある始まりの終わり