水曜日、午後3時に
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静寂と陽だまりと
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遠くでコソコソ
ささやきが漏れきて
眠たくなるような
ページをめくるリズム
それはきっと
細く長い繊細な指先
かれこれ5回目のダンテは
一向に進まず
誰からも見えないここは
特等席
彼の気配を感じる
水曜午後の特等席
ソールは不機嫌
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/nicole-cagnina-GP2Yd1Hcxsk-unsplash.jpg)
どうやらソールはご機嫌斜め
朝から反抗して出てこない
どんより雲が覆っているのに
ソールのせいで彼は来ない
法則が示す答えは
「今日もつまらない1日」
それもこれもソールのせい
気ままで自分勝手なソールのせい
デキソコナイのデキること
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/999082_800.jpg)
おままごとは
一人じゃないと楽しくなくて
真っ白な画用紙に
ただ途方にくれて
「みんなと同じように」
いつから気にするようになったんだろう
プラタナスの木漏れ日に身をゆだね
心地よい重みを手のひらで受ければ
欠陥品だなんて遠くの向こうに
忘れたころに感じる気配
彼も同じだったらいいのに
ハイヒールでつま先立ち
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/pamela-saunders-S-Med_LVdio-unsplash.jpg)
5本のフレームコレクションは
立てかけたル・コルビュジエと
壁際のオブジェ
悩ましいのは
ちょっとわがままなラグドール
ハチミツたっぷりのホットミルクと
深夜の戯れ
文庫本とマティーニを気取っても
ディオールのティントで
ちょっと背伸びしても
隣りのスツールはまだ無人
メガネ男子
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/bantersnaps-g18mC7IHXcE-unsplash.jpg)
からまって
がんじがらめにして
投げ捨てて
瞳の色をのぞき込んで
後悔を知る
そんな目で見つめないで
その瞳を向けないで
わかってしまうから
わたしが醜いって
わかってしまうから
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
Girls be…
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/2123617_800.jpg)
大きく振り上げた脚は
跳ねるように階段を上がった
セーラー服の裾が
風にひらりと揺れて
宙に浮いた体は軽く空気を割った
軽やかに駆け上がったのは
思い過ごし
いつだって独りよがり
薄れる背中を見詰めるだけ
彼とコーヒー
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/mike-von-X4d6DUMappU-unsplash.jpg)
香ばしく漂ったのは
駅前のフレンチロースト
眉根が寄ってしまったのは
ジャケットから覗く箱のせい
シャドールに気づいた日は
世界から音が消えた
見知らぬ誰かの香りが
まとわりついて離れない
しかめっ面で
同じブラックを今日もすする
オトシモノ
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/adam-kring-F9Pz-JoLtz8-unsplash.jpg)
口にする勇気なんて
どこかに落としてしまった
小指の深爪
馬鹿なわたしは繰り返して
いつしか慣れてしまった痛みも
痛いことには変わりなくて
たった一言
口にすることはできなくて
澱んで溜まって動けない
どこかで失くしてしまったから
彼に巡る物語
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偉そうな金のカリグラフィーを
そっと指でなぞってみる
あるはずのない温もりを求めて
なぐさめるように優しく
特等席は役目を失くして
陽だまりの中ひとりぼっち
さまよう指先はためらいがちに
今日もページをめくる
彼のいないWednesday
水曜日、午後3時に
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/2683544_1500-1024x683.jpg)
フレンチシックに合わせた
白のオペラシューズ
けだるい体を捻じ込んで
今日もルーティン
「いつもの」はまだ
口にできず
なめらかなオーダーは
決まってフレンチロースト
幾度も星が巡って
馴染んだ香りを連れて
伊達メガネの先に広がるのは
偉そうに重く構える戯曲
ここでいつも待ってる
戻ってくるのを待ってる
わたしと彼と同じ
ガラクタが見つけるのを待ってる
fin d’un début
ある始まりの終わり