すべての一瞬がある場所
花咲月
透き通る青
ひらり くるり
舞い踊る桜吹雪
ひらり くるり
青と桜のコントラストに溺れる
つま先が引力から放たれそう
「なにしてるの?」
大気圏から一気に落下
足元には桜の絨毯
薄紅色の花弁を差し出された
「ついてた」
花々が芽吹く花咲月
わたしのココロに
芽吹いた薄紅色の小さな花弁
世界の共有
クスリと笑うような
ページをめくる音
次の一行目
新しい言葉
溢れる世界
影を追いながら
文字の上を泳ぎながら
新しい言葉を吸収する
新しい世界を構築する
最後の文字を読み終わる
パタン
同じ世界を
こっそり手渡す
二人だけの
世界の共有
シルエット
教室のドアより
3cm低い頭のてっぺん
右から左に鞄を斜め掛けする
ちょっぴりなで肩
少しつま先が汚れた上履き
つるんとした耳たぶ
ツンとした鼻筋
少し色素の薄い瞳に
まつ毛の影ができる
口角がいつもふんわり上がってる
あなたの周りは楽しそうな笑い声
落ち着いた低いトーンの声
爪の形がキレイ
「おはよう」
「おはよう」
まっすぐ見れないのに
覚えてしまった
あなたのシルエット
キラキラ
若葉に雫
キラキラ
お日様に反射する
くすぐるような窓からの風
白いカーテンがふわりと踊る
透ける光
踊る光彩
あなたのいるシーン
いくつもの輝き
空は今日も
きっと明日も青くて
コミュニケーション
純文学
歴史小説
ミステリー
哲学書
クスリと笑えるコラム
夢占いに雑学書
「おもしろかった」
「よかった」
思考が止まるから
いつもそれで言葉が途切れる
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
ソーダ水
となりあわせ
あなたと歩く
ココロは爆発しそう
澄み渡っていた青空
ゆっくりゆっくり
オレンジ色からピンクにかわる
夕焼けに少しホッとする
ソーダ水を渡してくれた
シュワシュワが喉に気持ちいい
暗くなり始めた空に花火が咲いた
そっとあなたの手が
わたしの手を探して
指先同士をつないだ
ソーダ水だけが
ひんやり冷たかった
潜水艦
ちゃぽん ちゃぷん
ベルガモットの香り
深いブルーのお湯
バスタブの中
もやもやもやもや
頭はいい気分
ココロは
もやもやもやもや
あなたの声が
聞こえないのに木霊する
全体の顔はぼんやりとしか
思い出せないのに
瞳の色と笑顔の唇が見える
ぶくぶくぶく
わたしは潜水艦
しらない
気が付くと
あなた
しらない
目で追ってる
しらない
唇をギュッと噛む
しらない
感情が脳を支配する
春に芽吹いた花弁
今は若葉がまぶしい
秒針
「ちがうよ」
あなたとクラスメイト
いつもより少し
大きなあなたの声
教室の時計の秒針が止まった
視線が痛くて
泣きそうになる
1人で飛び出す
そしてただ
中庭に向かって歩いた
「違うんだ」
あなたに小指を包まれた
その後の言葉に
わたしの瞳は
あたたかい雫があふれて
また時計の秒針が止まった
ここにある世界
あなたと
一緒になった帰り路
横断歩道の真ん中
シャツの袖口
そっとつかんで
「もう少し一緒にいたい」
何を言っているのだろう
心臓が破裂しそうで
一瞬がこんなにも長く感じるなんて
あなたはやさしく微笑む
「また明日」
横断歩道を渡っていく
背中を見送った
横断歩道から横断歩道までの
たった100メートル
それがここにある
わたしのすべて
fin d’un début
ある始まりの終わり