微笑みは帰らない
夕暮れの並木道
2人でよく歩いた
並木道
あなたは散歩が
好きだったよね
2人で手をつないだ
並木道
すっかり日が暮れて
いつのまにか
私たちの仲も
暮れてしまった
いまは1人で歩く
並木道
偶然でも
あなたに会いたい
あの日から
あの日から、ずっと好きです
じっと見つめていたい
あなたの横顔
その笑顔のきらめきを
じっと聞いていたい
あなたの声
そのメロディを
あなたと目が合う
私はあわててうつむく
微笑みを残しながら
カクテル
あなたはバリスタ
私は出されたエスプレッソを飲む
どんな感想を述べても
あなたはただ微笑むだけ
もっと話してみたいけれど
話す資格がない
思い切って見つめてみても
あなたはただ微笑むだけ
あなたと私の間にある
境界線はいつも同じ長さ
バリスタとお客さん
それが私とあなたの関係
可愛いね
始めて言ってくれた
可愛いね
聞くたびに笑顔がこぼれた
可愛いね
感動が消えてしまった
可愛いね
いつの日か
愛されることは
当たり前になっていた
散る花のように
あなたは消えた
思い出すたび涙ぐむ
あなたの声
可愛いね
帽子よ消えろ
強い風がふいて
あわてて押さえたけど
ビュンと音を立てて
帽子は飛んでいった
あなたは、一生懸命探してくれた
あなたのやさしさに戸惑う
私のことが好き?
それとも彼女のことが好き?
「あったよ」
満面の笑みを浮かべて
あなたは帽子と一緒に
戻ってきた
帽子なんていらないのに
やさしさなんていらないのに
私はただ帽子を手に取って
泣いてしまいそうな気持ち
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
二人が終わる
「好きな人ができた」
「別れたい」
「もう会えない」
あなたの視線は
喫茶店の外を見ている
私のことは
好きだと言った
あなたはずるくて
私はとても臆病で
二人が終わる
去り行くあなたの後ろ姿
ぬるいコーヒーだけが残された
おいしくないけれど
まるで今の私みたいだから
残したら可愛そうだから
終わりの中で飲み干した
それでもいい
私はあなたにとって
どんな存在?
観葉植物みたいに
癒しになっている?
それとも
ポップコーンみたいに
魅惑的な存在?
もしかしたら
新しいゲームに飽きたとき
仕方なく取り出して
時間つぶしに利用する
古いゲームのような存在?
それでもいい
それでもいいから
連絡が来ること
心から待っている
あともう少し
目が覚める
口元がほころぶ
だって今日は
あなたに会えるから
雨がしとしと降っている
静かに静かに水が跳ねる
一方通行でもいい
好きな人がいると
濡れた足の冷たさも
一瞬で温かさに変わる
あともう少し
あともう少し
正直な気持ち
鉛筆を持って10分
1行も進まない
ラブレターの書き方を
さっき調べたのに
鉛筆を持って20分
なにも思い浮かばない
伝えたいことは
いっぱいあるのに
あなたに伝えられない
私の気持ち
宙ぶらりんな
私の気持ち
「もう好きじゃない」
正直な気持ち
あなたの「好き」
「好きだけど、もう一緒にいられない」
あなたの「好き」は
どんな「好き」なの?
私の「好き」は
好きな人と一緒にいられる「好き」だよ
あなたはただ黙って
寂しげに笑っている
fin d’un début
ある始まりの終わり