切ない香りのすべて
第一印象
ぼうっと頬杖ついてた
寝ぼけ眼
呼び覚ます香り
イノセントは印象深く
忘れられない夢のように
移りゆくジャスミン
トップノート
わたしの肩に纏いつく
おしゃべりは二の次
ひらりと落下した
栞は微動だにしない
ジェスチャー
耳馴染みのある
言い回しで話すのを
気がつかないふり
いつのまにか
わたしの発した口真似
あなたに移っている
身振り手振りのジェスチャー
嬉しい模写
おもわせぶりに
気がつかないふり
Again
話題を持ち寄り
休み明けの教室みたい
ソワソワ急ぐ会話
ギフトのように
差し出しては
戻れない日を
再生した
特別な小さい共通点
大げさに膨らます
あどけないふたり
天気予報
大逆転の晴れ間
うれしがる姿に
5日前から
あなたも気にしていたんだ
長く居座る雨予報
しぶとい傘マーク
吹き飛んだ天気
休日の非現実な空気
それよりも
気にかける先週のあなた
想像すると
思わず顔が綻びる
ベンチ
なんの変哲も無い道
木漏れ日注ぐ木々を目の前に
ふたりで休息
ベンチに腰かければ
絵画の錯覚
クリーンな別世界の静けさ
大事な場面で
手持ち無沙汰に
詰まるふたり
揺らす風
金色のリボンのようで
寂しいけど忘れたくない
時が止まればいい
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
中心部
あなたのせいじゃない
幼いハートノート
ややこしくしたのは
わたしのひとつの花
核となる香り
とげとげしくて
頑なに殻を破れなかった
あなたの期待する
成熟した振る舞いは
なぜだか
とてもむずかしい
言い訳
願望は目にとまる
長いロングヘア
誘発的なカラー
ないものねだり
見ないふりしないで
わたしも掴める
未形成なタイミング
落ちている花びらの自信
脆い言い訳ね
大切な機会に
変化できるの
知っているから
Depths
深い海
潜れば潜るほど
慎重になるばかり
その場その場で
避けて通れない
成長には伴う
不安な気持ち
胸を締め付けても
もう戻れなかった
この先の関係を
思えば思うほど
微熱
小さな両手で
型どり創作した
ハンドメイドクッキー
最後の飾りつけ
わたしに任せてくれた
見守る眼差し
あなたの端端に
似たぬくもりを覚えた
明白に思い出すのは
会えない今だから
遠くに離れてみてから
ぬくもりは増すばかり
残香
一緒に過ごせる
それだけで充分
満ちていた香り
穏やかに散る前
考えすぎた
受け身のわたしたち
人まかせにしすぎたの
散らばる会話
スピーカーから拡がる
ジャズの音色
窓を開けたら
シリアスは消えていく
ラストノート
振り返ると
バニラだけ残る
fin d’un début
ある始まりの終わり