多分わたしは涙だった
![多分わたしは涙だった](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/800-5502901932_1500.jpg)
光
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/1570501_1500-1024x768.jpg)
夜空は気まぐれ
窓を見上げる
わたしは祈ってる
特別な明日に
世界を奏でる雫に
煌めく星の光に
遠ざかる雨音に
一億光年の
願いを込めて
夜はゆっくりと
光を連れて来る
時計
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時間が止まったのを感じた
つまらない時
ゆっくりと進む
針の音だけの世界
その時
微かに優しく
低い声が響いて
世界から音が消えた
そうしてすぐに時計は動く
針の音が少し高く
少し早く
世界は進んでいた
わたしは止まったまま
あの一瞬を止めたまま
冷たい空の下
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/sophie-Gz3iikctfEw-unsplash.jpg)
お気に入りのマグカップ
冷たい手
ミルクで満たして
白く染める
はちみつを溶かして
カップで溶け合う
冷たい空の下
温めた
はちみつミルク
胸を温める
ほんのり苦く
ずっと甘い
つないだ手の温かさ
恋の味
一日が始まる
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/1085502_800.jpg)
さかさまの世界は
ほんの少し変わって見える
飾られた風景画
広がるいつもの朝の景色
遠くに音が
聞こえてくる
スッと目の前が
白く透明に
そうしてギュッと
閉じた目蓋の裏
見えた世界を閉じ込めて
開いた世界は
思っていたより
眩しくて鮮やかで
一日が始まる
閉じた目蓋に残ったあの世界を
残しながら
丘の上の赤い屋根
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/kevin-butz-sZj8qOt3yTU-unsplash.jpg)
胸に響く歌
赤い屋根の家
春の日差しの中
そよ風を感じて
走る朝
眼に映るのは
太陽の下
ライム色の丘
リンゴ色の家
甘酸っぱい気持ちで
どこまでも
駆けてゆく
あの丘まで
飛んでゆく
あの屋根の上
もう何も
怖くない
夢のランドスケープ
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
さよならした人
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澄み渡る青空
白い太陽
向こうに見える草原
空に消える飛行機
わたしのいつもの世界
世界に残った
ひこうき雲が
雨のキザシと知って
さよならした人の
残した涙と思って
雨を待って
晴れを待った
ひこうき雲を
わたしは今日も探す
いつもの眩しい空を見て
あの日の熱
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/ferdinand-stohr-DHLUEzpQ_sA-unsplash.jpg)
あの日
指が熱かったのを
覚えてる?
指の熱が心を
温めるのを感じた
熱に浮かされたわたしに届いた
柔らかな音
音と指を頼りに
向かった先は
たぶん
霧の国で
気づけば
何も見えない
今もわたしは霧の中
あの日の熱を探している
今はもう
暗闇の中
アダージョ
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/scott-evans-N4nm8sIw_L0-unsplash.jpg)
道は続いていた
見えた景色は黒色
息の音が
身体について
動けない
空から一つの音色
鍵盤の音
音楽室から届く
ピアノの音
ふと見上げた空は眩しくて
わたしはきっと光ってた
アダージョ
ゆるやかに
音のまま
ゆっくりと
身体は動いてゆく
呼吸はきっと止まってて
やっと吐いた呼吸は
ゆっくりとゴールの外に
届いてた
きっと音楽室まで
わたしだけの特別
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/marco-bianchetti-KFzvvFitypM-unsplash.jpg)
白い色
赤い色
青い色
パステルカラーが
わたしの全部
中はどれもが真っ白で
これからわたしに染めてゆく
溢れる気持ちは
空に溶けてく
溶けないようにとかき集めて
薄ピンクのノートは
あなた色
あなたがたくさん
わたしにくれた
わたしだけの特別
涙だった
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/03/2901932_1500-1024x684.jpg)
真っ白なブラウス
ゆっくりと袖を通して
いつもよりちょっと
長いスカート
髪のシュシュ
ブレザーに咲いた花
ちょっと短い道
全部が微笑みで
わたしは泣いていた
溢れる涙が
笑顔だった
多分わたしは
涙だった
桜はきっと
微笑んでいた
fin d’un début
ある始まりの終わり