わたしに残る物語

気づけば


はじまっていた


あなたはわたしに


恋していて


わたしもあなたに


恋している


星の下


手を繋いだ


優しい眼差し


“愛おしい”が伝わった


大切そうに


壊れぬよう触れる手に


“愛おしい”が伝わった


あぁ


もうひとりじゃないんだと


静かで温かい夜

すぐ会えるわけじゃないから


掴んでいて


離さないで


心の距離を測る


思考の迷路を辿る


愛の世界に居られない


わたしの悪い癖


いつも


どこか切ない


あなたは優しい


だから


いつも切ない

求めては


はね返す


心のかけら


あなたは大きくて


わたしは小さい


気づいては


裏返す


向かい合わせ


背中向けたのは


わたしだった


まっすぐな


あなたの視線を


失ったら歩けなくなると


わかっていたのに

ラブレター


鼻にかかった声


光る横顔に


シャッターを押す


変わらない眼差し


隠しごとができない表情を


忘れないようにと


シャッターを押す


重なるフィルム


この瞬間が


ずっと続いたらと


あなたを見つめる


全部知ってるかのように


包まれた世界に


どうしようもなく


愛しさを感じた

あなたと続けた


旅の終わり


あと少しで


終点に着くのだろう


進んできた道のりを


戻る強さもなく


もしまた同じ駅で会えたなら


違う二人に


なれるのかな


終点前に


ひとり降りる


告げるサヨナラ


「平気だよ」と


わたし


心に嘘をつく


もしまた同じ駅で会えたなら


本当のことを


伝えられるのかな

春の風


暮れない夏


秋に心が寂しくなって


冬の匂いに涙する


あなたが居ない


季節の過ごし方を


聞き忘れてしまったせい


あれからわたしは


胸に穴が開いたみたいだった


駅で小さなブーケを買って


きっと大丈夫だよと


時が背中を押す

手を差し伸べる


あなたじゃない人


このまま流されてみようかな


突然の波に問いかける


短い時間が終わり


長い時間を恋しく思う


今ならきっと


大切を大切で返せるのにな

走る鼓動


滲む手のひら


ボタンを押したら


あなたの声


気づきたくないけど


気づいてしまった


無人島にひとつだけ


持っていくとしたら


あなたと答える


きっと笑ってくれるだろう


その笑顔が必要だと


気づいてしまった

踊る


回る


重なる


心の扉を開けた時


はじめて虹が架かった


眩しいほどに綺麗で


もう離さないと握りしめた


歌う


転ぶ


二重奏


隣にいてね


隣にいるよ

あなたの手の平


小さな箱


目の奥まで届いた


キラキラ輝く


小さな指輪


愛を飾った薬指から


幸せが


溢れた


こぼれ落ちぬようにと


小さな唇


あなたに答える


幸せにしてね


幸せにするよ