こんなにも小さな希望
5月11日
あなたが想う
大事な人は
誰ですか
あなたが流す
きらめく汗は
どこに消えるの
あなたが拭う
涙のわけは
神様だけが知っている
校庭のグラウンド
5月11日
あなたとわたしが
出会った日
約束を探して
やさしさの中で
笑顔をなくした氷のように
約束を探して
あなたの横顔に旅をする
手の平につたわる
ラムネの冷たさが
思い出になる未来
想像したくない
「三角ベースをしよう」
みんなが同意する
わたしは顔を上げることもできず
ただうつむくだけ
あなたは今
わたしのすべて
空まで続く階段
生徒会室の前
いけないことだと
知っているけれど
立ち止まって耳をひそめた
12月22日が
あなたの誕生日って
わかったの
わたしより4カ月先に生まれた
ただそれだけで
空まで続く階段を
越えなければならない
いっそ潮風のように生まれたら
あなたとわたしは
ひとつになれたかもしれないのに
白雨
カーテンみたいに
たくさんの傘
鑑賞学習で行った
美術館
共感と多様性の
インスタレーション
あなたの笑い声
白雨に溶ける
わたしを守ってくれるのは
100本の傘なんかじゃなくて
ただまっすぐな
あなたのまなざし
宝物
川に続く道を
あてもなく歩いた
あなたが失くした
大切なキーホルダーを探して
見つけられたら
きっと喜んでくれる
胸を弾ませて
あてもなく歩いた
誰そ彼時は
もうそこまで来ている
あきらめることも
引き返すこともできない
このまま夕に
身を任せることしかできない
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
幸福な王子
誓うわ
やさしい人になると
誓うわ
捧げる人になると
川の見る夢は
いつか海になること
どうか言わないで
ひからびてしまう川もあるなんて
誓うわ
愛する人になると
誓うわ
従う人になると
渡り鳥の見る夢は
いつか南へ旅立つこと
どうか言わないで
力尽きるツバメもいるなんて
心まで失うこと
それはあなたを
もう愛せないこと
もう一度会えたら
あなたに会えて
よかった
いつかそう言えたら
今こそが
輝く季節
あなたの近くにいる時間
肩越しにのぞく空
あなたが教えてくれたのは
いつかもう一度会えたら
あなたに会えて
よかった
そう思える勇気
宵闇
あなたの大切なキーホルダーは
結局見つからなくて
でもそんなことさえ
忘れてしまったように健気に
あなたは笑顔をくれる
たんぽぽの白い綿毛みたいに
遠くへ飛び立つための
準備を整える夜の入り口
宵闇にうずくまるヒナ鳥が
わたしの心を呼び止める
Memories
あなたの夢を
わたしも見たい
あなたの場所に
わたしもいたい
あなたがくれた
やさしさを探して
彷徨いながら
悲しみながら
行き先はなかった
あなたと離れた
わたしの心には
わかっているのは
もうすぐ夜が
やって来ることだけ
紺碧に沈む空が
涙で滲む
12月22日
これから先の
たくさんの笑顔も
かかえきれない
たくさんの夢も
この手の中の
小さな箱に
全部詰め込んで
あなたに渡します
あなたがいてくれるなら
どんなに苦しい夜も
乗り越えていける
だからいつまでも
微笑んでいて
こんなにも小さな希望
fin d’un début
ある始まりの終わり
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