たった一人、私だけが
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方舟
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ずっと視線が
同じ高さだったあなたを
いつのまにか
見上げるようになったとき
方舟のように
音も立てずに
時計が動き出していた
今頃あなたは
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朝は
空が広い気がする
入れ替わったばかりの
新鮮で冷たい空気
深呼吸すると
朝露が肺にくっつくみたい
今頃あなたは
まだ眠っているのかななんて
瞬きするように自然に
考えていた
こぼれ落ちそう
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/04/2901928_800.jpg)
小さな頃は
赤が好きで
うさぎが好きで
お母さんのつくる
甘い卵焼きが好きだった
あの頃の「好き」は
単純でわかりやすく
明確だったのに
歳を重ねるごとに
見えにくくなってしまうんだね
今の「好き」は
ありあまるほどの感情
つたない手から
こぼれ落ちそう
貝殻
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/04/1036064_800.jpg)
砂浜を一緒に歩く
そんなことも意識せず
自然にできていたのに
あなたが
拾った貝殻を
さりげなく私に手渡して
「そういうの好きじゃん」
なんて言うから
途端に広がる微熱
思わせぶりな前髪
ぎこちなく揺れる腕
水平線の彼方から
荒くて強い風が吹く
私はもらった貝殻を
守るようにして
ぎゅうと手に力を込める
知らなかった
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霧のような淡さで
雨のような静けさで
心に湧いていく
薄桃色の想い
感情が
こんな広がり方をするなんて
知らなかった
ふわふわと漂うようにしながら
こんな重さで心に残るなんて
知らなかった
いいのだろうか
これを恋と認めても
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
ソフトクリーム
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ソフトクリームが溶けて
ぽたぽたと
アスファルトに
吸い込まれていく
2人分の影は
重なることのない
微妙な距離感
爽やかな風の中でいま
私だけが
ソフトクリームの冷たさと
あなたの手の
体温の高さを知っている
たった一人、私だけが
今まで/これから
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まだ背が低かった頃のあなた
まだ声が高かった頃のあなた
戦隊モノのおもちゃで
戦っていたあなた
高い遊具に登れずに
泣いていたあなた
全部覚えてる
小さな頃から隣にいて
面白いくらい一緒にいて
それなのにここにきて
こんなにも愛おしいと思う
おかしいね
今までの成長も
これからの活躍も
そばで見たいと願ってるなんて
親切と愛
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優しいあなたに
貸してもらった本
これは親切
優しいあなたに
貸してあげたい本
これは愛
同じもので
同じ行為でも
親切と愛は違う
私はただ
あなたからの
愛が欲しい
かわいい提案
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放課後
屈託のない笑顔で
駆け寄ってくるあなた
「一緒に帰ろう」
どこか大人びた自分がいて
かわいい提案だと思いながら
静かに頷いた
ありがとう
太陽のような明るさで
いつも私を引っ張ってくれて
そっと教えて
![](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2021/04/max-saeling-IcOn1qzoTHE-unsplash.jpg)
夕闇に守られる
2人の間を
夜風が
吹き抜けていく
いつも少し前を歩く
あなたなのに
今日はぴったり隣にいる
なんだか歩きにくい
息がしにくい
聞きたいことが
たくさんあるけど
ひとつだけ
遠回りしてくれる理由を
そっと教えてほしい
fin d’un début
ある始まりの終わり