デジャヴュと恋の境界線
わからないこと
朝日のまぶしさと
電車に揺らされて
心惑わされた
あの人は
一つ前の駅で降りてゆく
扉が開く時
気のせいかもしれないけれど
微笑みが見えて
どこか
この世にない場所へ
去って行ってしまうような
怖さが胸に込み上げる
気のせいかもしれないけれど
心音と
車輪の音が重なって
私がぽつり
犯人は案外
物語の始めに
登場するらしい
私の人生における
犯人の登場シーンを
探してみるけれど
心は奪われても
警察は動かず
無罪放免だ
難解なミステリーに
私が
ぽつり
謎解き
心臓の淵が
こんがらがって
いるみたいだ
暗号解読班
この不明瞭な想いを
紐解いて
確かなものに
して、
虫眼鏡の淵が
曲がりくねって
いるみたいだ
謎解きは
終わらない
高鳴り
夢見る少女と
ワンダーランド
ありきたりなフレーズを
並べてメルヘン
馬車はなくて
王子様もいない
平凡世界の
ファンタジー
剣も魔法もないけれど
胸の高鳴りを
どう表そう
想像力に
乏しいね
言葉ばかりが
あふれて止まない
あの人
知らないことが
多すぎて
勉強中です
とはいえ
教科書には
私の病状も
あの人の行方も
書いていないのです
学習指導要領上
不適切な単元です
知識と疑問の反比例は
解を為さないみたいです
あの人は
答えを
知っているのかな
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
境界線
繰り返す夢のことを
なんていうんだっけ
デジャヴュは
違う意味だったかな
現実と
そうでないものの
境界線
うっすらと
なぞりたくて
目を覚ましたら
駅のホームで
蛍光灯
ちかちか
夢の時間は
明日もくるのかな
贅沢
おろしたての
ローファー
艶やかな焦げ茶色
気づいてくれたら
なんて
どうしようもないけれど
うきうきしてしまう
ものなのです
足音も
軽やかなのです
そんなふうに
物語を彩る
つつましやかな
贅沢を
恋煩い
かの文豪が
訳した言葉を
この時代にも
真に受けて
頬を赤らめてみたい
そうでなくたって
見つめられれば
私はいとも簡単に
咲いてみせましょう
季節は春
いつまでも春
そのくらい
単純な
恋煩いだ
この声は届かない
ねえ
フリードリヒ
私の
この感情を
すでにあなたは
記してしまったのですか
ねえ
フリードリヒ
もういない
あなたを
いつまでも探して
愚かだと笑いますか
ねえ
フリードリヒ
この声は
届かないけれど
そっと耳を
傾けてほしかったな
この恋の観測者
この恋の
観測者A
おまえは完全に
包囲されている
今ならまだ
引き返せるよ
そうでなければ
崖の際まで追いつめて
海原に
突き落としてやろう
そんなこと
しなくたって
もう
止められないよ
私は
この恋の
観測者B
犯行現場は
今日も穏やか
あなたの微笑みを
静かに
待っているから
fin d’un début
ある始まりの終わり