終わらせたいほどの幸福を紡ぐ
![恋愛詩集 終わらせたいほどの幸福を紡ぐ](https://hitokakeranoima.com/wp-content/uploads/2022/05/800-5505595343_1500.jpg)
あなたが残る
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最初にあなたを見たときの
樹木のような凛々しさを
自分の中でくだいて
混ぜて消化して
そうして残ったのが
あたたかい憧憬と
一握りの安堵
こぼれないように
あふれないように
静かにポケットにしまった感情
これらを人に見られたら
溶けてしまうと聞きました
この情緒の名前
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出典: snapmart.jp
まるで
本を読んでいるみたい
わたしの中から
言葉が溢れ出して
あなたの存在を形作る
不安定な芯には
ネモフィラの花びらを
あなたへ続く道には
ススキの穂を敷いて
この情緒に名前をつけたい
いつかあなたに辿り着きたい
一番空に近い葉
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神様がもしいるのなら
これだけは聞いておこうと思う
ヒトはなぜ
飛べないのでしょうか
こんなにも長い手足があって
こんなにも発達した脳があって
なぜ自力では
飛べないのでしょうか
もしも飛ぶことができたなら
わたしはモミの木のてっぺんの
一番空に近い葉を
お守りとして折っておくのに
確固たる白さ
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好きという気持ちは
赤やピンクで表されるけれど
わたしは純白だと思う
それも油断は許されない白さ
あっという間に染色されてしまう白さ
潔癖なほどの境界線を保つ白さ
他者には眩しい白さ
なかなか色付かない恋を
塗りつぶしてくれるほどの
そういう確固たる白さ
おかげで胸を張って歩ける
鮮烈な懐古
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握ったはずの拳から
いつのまにこぼれ落ちたの?
あの冬の日の雪の結晶
うららかな春の木漏れ日
あなたの手の温もり
永遠の誓い
目に見えないそれらは
いつも形には残らず
音も立てずに消えてしまう
留まるのは鮮烈な懐古だけ
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
夜空の欠員
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夜空の星を
等間隔に配置して
悲しいことがあったとき
骨を折るようにして落とす
深い意味なんてないのよ
星たちが落ちる
たったそれだけのこと
少し動けば
触れられる距離にあなたがいて
その髪に触れる理由を探してる
夜空の欠員なんかより
そっちのほうがよっぽど
重大で愛おしいこと
繋いでもいい手
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世界には
何十億もの人がいるのに
繋いでもいい手は
ここにあるあなたのものだけ
うんと優しく聞こえた声に
朝の陽射しを送りたい
包むようなその眼差しに
夜の匂いを添えてみたい
わたしの隙間を
あなたの感情で埋めて
足りないところが
ないようにして
あなたのことを想うとき
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あなたのことを想うとき
記憶は温度を伴って
あなたのことを想うとき
手のひらは期待を孕み
あなたのことを想うとき
窓外の景色は発光し
あなたのことを想うとき
指先は嫉妬で震えます
あなたのことを想うとき
円柱形の恋心
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半透明の感情を
フラスコに入れると
水のように形を変えて
円柱形の恋心
とろりと揺れて
飛沫を立てて
あなたに注がれるのを
待ってる
いつだって足りないものは
叶うわけがないって
心のどこかで
あきらめたこと
終わらせたいほどの幸福を紡ぐ
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幸福の先に見える消失に
押しつぶされそうな朝
あなたの優しさを
知れば知るほど怖くなる
あなたの愛を
受ければ受けるほど弱くなる
映画だったらここで終了
ハッピーエンド
でもそんな訳には
いかないから
わたしは今日も
終わらせたいほどの幸福を紡ぐ
fin d’un début
ある始まりの終わり