一途な恋が報われる世界

一途であれば


報われるなんて


科学的根拠も


示されては


いないのにね


想い続けて


いられるうちが


幸せかもね


顕微鏡で見る世界は


存外


平和なのかもね


細胞という細胞が


破裂したって


おかしくないよね


論文なんて


見当たらないけど


大げさに言えば


そんな感じ


伝わらないなら


宿題にするね

現実世界で


同一座標に


物体は存在できない


二人が重なる


という言葉の


矛盾を指摘する


あなたの


そういうところに


敢えて


ロマンスを


感じてみようか


実験はお好きでしょう、


なんて


慣れない


論法が


通じればなあ

対象Aを


知覚する上で


その認識は


どのような


アプローチで


行われるべきか


フラスコに入れますか


アルコールランプで炙りますか


レントゲンでも撮りますか


如何様に


致しましても


不変の存在は


あるものよ


例えば、の


その先は


言いませんが

プレパラートは


よく割れる


それはもう


気持ちの良いくらいに


粗末に扱っている


わけではないけれど


破片の


ひとつは鋭利に


傷をつけて


それすら


過程


なのだというなら


それ相応の


結果を


出してみせてよ


そうじゃなければ


もっと


大事に扱って

アルカリ性でいてね


理解しかねる


お願い事は


むしろ


理解しないで


おくことにした


仮に


わたしが


酸性だったら


あなたは


どうなってしまうというの


どうなってしまっても


わたしは


かまわないけれど


せめて


ヒトの形は


保っていてね

何らかの化合物を


シャーレに塗りたくって


起きる事象を


調べることより


楽しいことは


世の中に


溢れていると


思うのだけれど


実験器具に


ドライフラワーを


飾り付けるおしゃれも


呆れるような


あなただ


しかたないね


シャーレは紫に染まったよ

混ぜ合わせると


別のものへ


変化する


試験管の底


よく振ってみて


或いは


そのまま


もしかしたら


世紀の大発見


茶化しても


動じないから


つまらない、


なんて思わない


わたしは


変化し続けているよ


気付いているかは


知らないけれど

確率と


結果は違うよ


これまで


幾度


コインが投げられ


そのうち


何度


表が出たのか


誰が数えたというの


あくまで


推論


しか


できない


わたしたちは


平等だね


これまでも


これからも

ドライアイスなんて


ケーキを持ち帰る時にしか


使ったことないよ


もくもく


冷たい煙が


床を這う


それは


ちょっぴり幻想的な


非日常


あなたが


どういうつもりで


固形二酸化炭素を


撒いたのかは


さておいて


楽しくなった


自分が悔しいな


まんまと罠に


嵌められた気分だ

不確定要素を嫌う


あなたが


わたしという


不穏因子を


許しておくはずはないと


思い込んでいた


けれど


わたしの


勘繰りが過ぎたのか


ビーカーの液体は


本当にスポーツドリンクなのか


わたしにとっては


わからないこと


ばかりだけれど


あなたにとっては


知るに値する


存在なのかな


だとしたら


いつまででも


研究し続けて


いいからね