記憶の再生
はにかみながら 「一緒に暮らそう」 唇の動き 過ぎ去らない過去 あの日の部屋 テーブルの上 写真立ての向こう あの日から 包んだ荷物は ずっと佇んでいる もう動かない 古い時計のように
はにかみながら 「一緒に暮らそう」 唇の動き 過ぎ去らない過去 あの日の部屋 テーブルの上 写真立ての向こう あの日から 包んだ荷物は ずっと佇んでいる もう動かない 古い時計のように
別れる間際の 夜は 静かすぎる ほどでした すれちがいも 何もない 夜でした 別れる間際の 朝は 何故か優しい ものでした これまでの 思い出たちを 撫でるような 朝でした 素敵な日々を 受け止めて 終わりにします ここから ずっと
伏し目がちな横顔 ふわりと香る洗い立てのシャツ 遠くで鳴る始業ベル 木々のざわめきに抱かれ 世界の音が消える 数えきれぬ旅立ちに あなたとふたりきり ただ空の中だけでは どうか優しいぬくもりを どうかこのまま伝えてね 夜に願うのは 穏やかな余韻 朝には笑えるように 少しだけ踏み出せるように
どうしたらあなたが 喜んでくれるのかわからなくて どうしたらあなたが 笑ってくれるのかわからなくて 涙も暮れきる夕暮れの 図書室の隅に別れ来て つくづく寂しいわたしの心 あなたの心に寄り添へば いつか心も晴れるでしょうね 誰も知らない星が出てゐる
映画館 ラメ入りの空 ほんの少し距離があるまま きみと歩いた夜 遠くに街の声 とあるワンシーンみたいな ふたりぽっち なのにどうして 悲しい気持ちなの? 世界から放り出されて 果ての淵に立つ わたしだけは ひとりぽっち
あなたの行く道は どこだろう 地元に残ったわたしとは はなればなれ 視線の先に将来の夢 甘かったのは 指先に残ったクリーム あなただけでよかったのに 少しだけ苦い後悔 平行線でミルクを溶かす ちらちら舞う風花 あなたは光をさえぎって 彼女の曲線と重なる わたしの恋も 雪解けを迎えた
あなたが住んだアパートに 来週行ってみませんか いつもの路地を通り過ぎ 夕暮れの中を二人きり この街の匂いと あなたの肩の匂いと わたしはただそれだけで 明日への勇気が持てました 二人が離れた今になっても わたしは希望を捨てられません いつかあなたが笑いながら アパートのドアを開けてくれる気がして
あの人の手の温もりを忘れたい あの人の優しい声を忘れたい そうして自分の傷を 悲しい願望に変えながら あの人のことを 少しずつ忘れていく 涙で結露した心臓を 外の風にさらして とことん乾かして あの人から旅立つために