思い出を後にして
あなたはわたしを 思い出にできる? 誕生日に贈った シルバーリング もう忘れているというのに わたしはあなたを 思い出にできる? オーダーメイドした 紺色の長財布 今も使っているというのに いくつものすれ違い 温かい缶コーヒー 思い出を後にして 生きていくの わたしはあなたと 生きていきたい
あなたはわたしを 思い出にできる? 誕生日に贈った シルバーリング もう忘れているというのに わたしはあなたを 思い出にできる? オーダーメイドした 紺色の長財布 今も使っているというのに いくつものすれ違い 温かい缶コーヒー 思い出を後にして 生きていくの わたしはあなたと 生きていきたい
あなたに言われた 何気ない言葉 それは甘いからかい 冷たい称賛 苦い共感 一つ一つが降ってくる 記憶の奥底から漏れ出して 優しい子守唄のように わたしを 世界を 包みこむ まろやかな夜に あなたの声と沈む
はしゃぎすぎた帰り道 駅のホームで たくさん話した 車内アナウンスは 急行の停車駅 わたしとあなたは 普通列車であと2駅 みんなが降りたあと シンとした車内 それがわたしとあなたの 限られた時間 あと何回 この時間を過ごせるのかな あと何駅で この気持ちは伝わりますか 毎日毎日 2駅分を過ごしては 今日もあなたと 別れるだけ わたしだけが 切ないだけ?
夜明け前の ほんの一瞬 その 瞬間が 夜空が一番 暗くなるんだ そんな たわいもない あなたの言葉が 暗闇に 一人で立つ 私の心を 優しく包む 静かに 花びらのように 落ちてくる雪が 冷たい涙に ぬれたほほに あたたかく ふれてとけた
吐く息が凍る朝の舗道で かじかんだ私の手を あなたは握ってくれる いたずらっぽい笑みを湛えて やさしい私のお日さま 胸の片隅 いつも佇んでいるの 大きな温かい手で ぎゅっと握られた あなたの体温
差し込んだ光が 彼を照らす 長いまつ毛 大きな瞳 わかってる 視線の行き先 わかってる 愛おしそうな瞳 甘い彼女に 惹かれているのね 彼女を見つめる瞳 悔しいけど とても素敵 甘い彼女に 惹かれているのね
きっとおこがましいほど 神様が苦笑いしてしまうほどに 私達は感情に名前をつけたがる 君と一緒にいたいと願いながら 君の幸せも 君の大切な人の幸せも そっと願うこと この気持ちはなんていうんだろうね
真っ白なブラウス ゆっくりと袖を通して いつもよりちょっと 長いスカート 髪のシュシュ ブレザーに咲いた花 ちょっと短い道 全部が微笑みで わたしは泣いていた 溢れる涙が 笑顔だった 多分わたしは 涙だった 桜はきっと 微笑んでいた
時間と距離を超越できるほど 熟してなくて 苦みをの強い酸っぱさに 捨ててしまえと甘い誘惑 後味の悪さも 言い訳にはまだ弱い 往生際の悪さも 磨きがかって 悪いクセが頭をもたげる 「仕方ないなぁ」 もう少しだけ頑張ってみる 最後まで付き合ってあげるよ
光の中へ わたしたちは往く 科学の進歩も 文化の発展も 関係ないね 前時代的な恋を したいだけ そのために わたしは巣をつくり あなたを捕まえる 超古代の叡智かもね 寡黙なスナイパーは わたしには向いていない 蠱惑のスパイダー 柄でもないけれど もしかしたら 現代的かもね ただ あなたを 捕まえたいだけ