過ぎていく色彩
あなたに向かって
路地の隅
ポツンと花を咲かせるように
ただひっそりとここにある
わたしの中の白詰草
踏み荒らされても
ひたむきに
あなたに向かって
伸びる雑草
幸せのすべて
心地よい陽だまり
通りかがった路地から
流れる軽やかな旋律
横切った猫の親子
信号もわたしの味方
羽が生えたようで
見上げれば彩雲
それすらあの人に
全部あげたい
切り取った幸せの
すべてを見せたい
戯れ
焼けつくような日差し
幻想的な水面
飛沫に笑い声をあげる
無邪気な戯れ
パラソルから盗み見て
冷めない熱は頬を染め
今日もわたしは
焦がれて溺れる
眠り姫
王子様には程遠い
わたしの内を占める人
黄昏に沈む教室
目覚めたわたしを笑う人
揺れるベージュのカーテン
重なることのない
二つの影
わたしが眠り姫ならば
たなびくマント
白馬に乗って
ハッピーエンドに
連れてって
色彩
色彩をのせて
過ぎていく日々
あなたのせいよ
深く沈む濃紺
静寂の銀
淡くにじむ薄桃
呼ぶ声は青藍
はじけた笑顔の金
あなたのせいで
心の奥はいつでも紅
透明なわたしに
色彩をのせて
輪郭を描いた
きらめくあなた
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
未来
夢うつつに重なる
白く伸びた腕
かみころしたあくび
かすむ寝ぼけ眼
頭の中をこだまする
昨夜の戯れ言
突き刺すように
冷たい水ですすいだ顔が
ほころぶほどに高鳴る期待
今だけは臆病だよ
どうか隠れていてほしい
そうしてわたしはあなたを想う
わたしとあなたの未来に馳せる
わたしの恋
どこでもない場所
なんてことのない喧騒
寒さに丸めた背中が愛しい
わたしと世界の表情を変えた
見つけた猫背に駆け寄って
見つからないよう一呼吸
ありがとう
どこでもない場所
なんてことのない喧騒
雑踏にまぎれたわたしの恋
悪
善悪の天秤
胸が傷むと表れる
悪いのはわたし
あなたのことが好きだから
悪いのはあなた
いつも無遠慮に振る舞って
悪いのはわたし
些細な言葉に心が躍る
悪いのはあなた
そんなわたしに気づかない
わたしとあなた
そうじゃない
わたしだけが悪の天秤
部屋
心を決めて準備した
いびつな形のクッキー
よくある甘いフレーズ
副産物のホットココア
まとめて全部飲み干した
ビターな香りが漂う部屋が
わたしの思惑をあざ笑う
ここにいて
あなたからイヤーカフ
わたしの耳にとまった
愛らしい藤色小鳥
花より似合うよと
たたく軽口
BGMには別れの曲
馴染んだチャイム
紙と埃と人の香り
珍しい沈黙
つられるわたし
ホトトギスのつもりだと
意味のない主張を
愉しむのも最後
わたしの耳を止まり木に
ツンとお空を見上げる小鳥
まだ行かないで
ここにいて
fin d’un début
ある始まりの終わり