目が合えば微笑むこと、手を握れば温かいこと
隣で優しく笑うひと
ゆらゆらと降り注ぐ
夏の陽射し
頬を撫でゆく
かろやかな風
遠くに聞こえる
子供たちの嬌声は
あなたの口元を
そっと緩ませた
好きなものは2つ
夏特有のこの気だるさと
隣でやさしく笑うひと
ここに来て
淡い光をまっすぐに受けて
満足げな花瓶
緑に映える純白の花びらが
カーテンの隙間で
揺れている
ねえ ここに来て
胸に痛いほどの
瞬間的な美しさは
1人では手におえないから
宝石みたいに閉じ込めたい
クリーム色のシーツ
檸檬色のまくら
ひまわり畑に埋もれて
3拍子の寝息
わたしたちのための
柔らかい世界を
飴玉みたいに
宝石みたいに
掌に閉じ込めたい
混乱するほどの色彩
壮麗さの犠牲に
時間をなくしたグラジオラス
胸の奥深くに咲いて
あなたを迎え入れる
つまさきにかぶる波
規則正しいチェロの音
2人を包むのは
混乱するほどの色彩
幸福で平和であたたかい世界
こっちにおいで
好きな声に導かれて
弾かれたように駆け寄った
夜の色気を
朝の優しさに変えて
かわいい絵本みたいな
幸福で平和であたたかい世界に
あなたと2人
身を寄せ合えるのがうれしくて
Journey in to Chapter II
第2章へ続く
Chapter II
一つの光景
おばあちゃんになるまでカラフルな恋をしよう
移ろいゆく光を捕まえて
あなたの手で描かれた
プロヴァンスの風景画
多彩な色を使って
過去にも未来にもない
たったひとつのオリーブ畑
わたしたちの淡くて美しい恋は
何色になるんだろう
おばあちゃんになるまで
カラフルな恋をしようね
なびくワンピースに感情をのせるフリ
責めたててくる
陽射しから逃げたくて
白いハットを被りなおす
なびくワンピースに
感情をのせるフリ
愛しいあなたの表情が
少し心配そうだから
くすくすと
悪戯に
笑ってみせた
フレンチキスに滲ませて
優しさを道端に
捨ててほしくはなくて
遠回しの牽制
気付いてくれたかな
どうか私を抱きしめて
2人で新しい景色を眺めて
軌跡と称賛を
信頼と愛情を
フレンチキスに滲ませて
駆け出したカノン
小鳥のように
飛び出していく愛くるしさ
夏空の下で
無邪気な笑い声が
青嵐にさらわれて
駆け出したカノン
期待をはらんだ白いシャツに
2人の未来をくるんで仕舞う
これは数年後に開ける
感情のタイムカプセル
目が合えば微笑むこと、手を握れば温かいこと
まぶたの上に手をかざして
地平線を見やれば
海のようにさざめく
広大な麦畑
サンダルを脱いで
時計を外して
あなたの手だけを
大切に握りしめる
目が合えば微笑むこと
手を握れば温かいこと
それだけのことが
こんなにも胸を打つなんて
教えてくれたのは
隣で優しく笑うひと
fin d’un début
ある始まりの終わり